技術:リチウムイオン電池の性能を高める溶媒
Nature
2024年2月29日
リチウムイオン電池用電解液を改善する溶媒が見いだされ、この溶媒を使用すると、リチウムイオン電池を低温で使用した場合でも充電速度と電池性能が向上することが明らかになった。このことを報告する論文が、Natureに掲載される。
充電式リチウムイオン電池は、私たちが日常的に使っている数々のデバイス(携帯電話、電気自動車など)に使用されており、電池の性能を高めて、エネルギー密度を高め、充電時間を短縮し、動作温度範囲を広げることが求められ続けている。しかし、こうした改良は困難を極めている。そのためには、互いに無関係な複数の特性を備えた電解液が必要になるからだ。例えば、導電率が高いことや溶媒和エネルギーが小さいこと(リチウム塩の解離過程に関連する)などがあるが、そのために電池のサイクル寿命が短くなることがある。
今回、Xiulin Fanらは、新たな溶媒を使用することが解決策になる可能性があると指摘している。フルオロアセトニトリルという溶媒は、低分子で構成されている。Fanらは、この溶媒が電解液中のリチウムイオンの移動を改善するため、導電率が上がり、急速充電しやすくなると報告している。Fanらは、溶媒中の低分子がリチウムの溶解機構を変えて、イオンの輸送を促進するという見解を示している。−65℃の低温でも導電率は高いままであり、Fanらは、低温での充電性が著しく向上していることが示されたと述べている。
同時掲載のNews & Viewsでは、Chong YanとJia-Qi Huangが、今回のFanらの研究は「次世代リチウムイオン電池の開発のための新たな研究の道を開くもの」であり、今回の研究で検討された複数のコンセプトは、「これ以外の金属イオン、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのイオンを電荷キャリアとして使用するエネルギー貯蔵システムに有用となる」可能性があると指摘している。
doi:10.1038/s41586-024-07045-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
化石:最も古く知られている「爬虫類」の足跡Nature
-
惑星科学:月内部の非対称性を示す証拠Nature
-
古生物学:「シカゴ」始祖鳥が、この古代鳥に新たな知見をもたらすNature
-
理論物理学:二体問題を解くNature
-
がん:乳がん治療薬の臨床試験で生存率の向上が示されたものの、がんの消失は限定的であったNature Communications
-
Nature Scientist at Work コンペティションの受賞者の発表Nature