地球科学:地球の中心に何があるのか
Nature Communications
2023年2月22日
地球の内核に内核下部が存在しているという可能性に関して新たな知見が得られ、それが鉄の球体(半径:約650キロメートル)である可能性が示唆されたことを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。この新知見で、地球の形成と進化に関する理解が深まる可能性がある。
地球の中心部の探査は、惑星の形成と進化を理解する上で極めて重要だ。内核下部の存在と大きさについては、ずっと以前から仮説が提唱され、議論の対象になってきた。しかし、地球の内核下部の探査は、地球深部のサンプリングのために十分な感度を持つプローブがないため困難だった。
今回、Thanh-Son PhîmとHrvoje Tkalčićは、既存のプローブによって得られたデータを照合し、地震によって発生するエネルギーの地震波が地中を伝播して到達する時間の違いを測定した。今回の研究では、地球の直径全体に沿って最大5回反射する地震波が初めて観測され、この地震波の伝播時間から、内核の外層(内核上部)とは別に半径約650キロメートルの内核下部が明確に存在していることが示唆された。著者たちは、この内核上部と内核下部の界面が、過去の内核の成長における数々の変化を反映している可能性があると考えている。
また、著者たちは、今後の研究において、内核下部から内核上部への遷移の特性を解明することに注力し、地球の深部とその生成史の理解を深める必要があるという見解を示している。
doi:10.1038/s41467-023-36074-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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