健康:シロシビンの使用がオピオイド嗜癖のリスク低減に関連している
Scientific Reports
2022年4月8日
米国の成人を対象とした全国代表調査から、人生のいずれかの時点でシロシビン(一部のキノコに含まれる幻覚性物質)を使用したことのある成人は、使用したことのない成人と比べて、オピオイド使用障害になる可能性が約30%低いことが明らかになった。この結果を報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。
今回、Grant Jonesたちは、2015~2019年に収集した調査データを用いて、成人21万4505人におけるオピオイド使用障害の発症と幻覚剤使用の蔓延を調査した。この調査で、参加者は、過去1年間にヘロインや処方鎮痛剤の乱用や依存があったかと、過去1年間に幻覚剤(シロシビン、ペヨーテ、メスカリン、LSD)を服用したことがあるかを報告した。2183人の参加者(1.0%)が、過去1年間にオピオイド使用障害の基準を満たした。そして、2万2276人(10.4%)がシロシビンを使用し、そのうちの1万284人(46%)が、人生において少なくとも一度は快楽を得るためにヘロインまたは処方鎮痛剤を使用したことがあると報告した。
Jonesたちは、シロシビンを使用したことがある人は、使用したことがない人に比べて、オピオイド使用障害になる可能性が約30%低いことを明らかにした。また、シロシビンを使用した人は、使用したことのない人と比べて、過去1年間にオピオイドの依存と乱用の11症状のうち7つを経験する可能性が約17~34%低かった。このことは、シロシビンの使用が、さまざまなオピオイド使用障害の症状に対する防御効果があることを示唆している。これに対して、ペヨーテ、メスカリン、またはLSDの使用とオピオイド使用障害を発症する可能性との間に有意な関連は認められなかった。
Jonesたちは、シロシビンがセロトニンとドーパミン(これまでの研究で嗜癖に関連することが明らかになった2種の神経伝達物質)の伝達に影響を及ぼすことにより、オピオイド使用障害に対する防御作用があるかもしれないと推測している。また、これまでの研究で、霊的体験と霊的信念が物質乱用からの良好な回復結果に関連しているとの観察結果が得られたことから、Jonesたちは、シロシビンが誘発する神秘的体験や霊的体験がオピオイド使用障害を発症する可能性を低下させるという考えを示し、シロシビンとオピオイド使用の関係を調査するには、長期観察研究や臨床試験を含むさらなる研究が必要だと付言している。
doi:10.1038/s41598-022-08085-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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