健康:中年期の睡眠時間が認知症の発症リスクに関連している
Nature Communications
2021年4月21日
英国の成人約8000人を25年間にわたって追跡調査した最新の研究で、中年期の夜間の睡眠時間が1日6時間以下の場合に認知症の発症リスクが高くなることが明らかになった。このことを報告する論文が、今週、Nature Communications に掲載される。今回の知見から因果関係を確証することはできないが、睡眠時間と認知症リスクに関連があることが示唆される。
全世界で、毎年1000万近くの新規認知症症例が報告されている。一般的な症状は、睡眠パターンの変化だが、認知症発症前の睡眠パターンが認知症の一因である可能性を示唆する証拠が増えている。65歳以上の高齢者の場合には、睡眠時間が認知症リスクに関連しているが、この関連が若年層にも当てはまるかは明らかになっていない。
今回、Séverine Sabiaたちの研究チームは、1985年から英国人7959人の健康状態を調査してきたロンドン大学ユニバーシティカレッジのWhitehall II研究の調査データを分析した。この調査では、被験者が睡眠時間を自己申告し、それが正確な見積もりであることを確認するために被験者の一部が時計型加速度計を一晩中着用した。分析の結果、50歳または60歳の時点で一晩の睡眠時間が6時間以下の人は認知症リスクが高いことが示された。また、中高年期(50歳、60歳、70歳)の時点で睡眠パターンが常に短い人は、心血管代謝疾患やメンタルヘルス上の問題(認知症のリスク因子として知られている)の有無とは無関係に、認知症リスクが30%高かった。
この知見は、睡眠が中年期の脳の健康に重要だと考えられることを示唆している。今後の研究で、睡眠習慣を改善することが認知症の予防に役立つかを確証できるかもしれない。
doi:10.1038/s41467-021-22354-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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