動物学:マウンテンゴリラは胸をたたいて自分に関する情報を伝えているのかもしれない
Scientific Reports
2021年4月9日
マウンテンゴリラ(Gorilla beringei beringei)の胸たたき(手で胸を素早くたたいて太鼓のような音を出す行動)は、自身の体サイズに関する情報を伝える行動であり、個体の特定を可能にする可能性があるという見解を示した論文が、Scientific Reports に掲載される。この知見は、マウンテンゴリラのコミュニケーションに非発声行動がどのように寄与するのかを示している。
ゴリラ類が胸たたきをして情報を伝えていることはすでに提唱されているが、伝えようとする情報の正確な内容は分かっていない。今回、Edward Wrightたちの研究チームは、ルワンダのボルケーノ国立公園でダイアン・フォッシー・ゴリラ基金によって監視されている野生のシルバーバックゴリラの雄の成体25頭を2014年1月から2016年7月まで観察し、記録を取った。体サイズは、写真に写ったゴリラの左右の肩甲骨の間隔を測定して決定された。また、Wrightたちは、録音を用いて、6頭の雄による36回の胸たたきの持続時間、回数、可聴周波数を測定した。
Wrightたちは、大柄な雄が胸をたたく音の可聴周波数が、小柄な雄が胸をたたく音の可聴周波数より有意に低いことを明らかにした。Wrightたちは、大柄な雄は喉頭近くの気嚢が大きく、これによって胸たたきの際に生じる音の周波数が低くなる可能性があると考えている。また、胸たたきの持続時間と回数に個体差があることも観察された。これらの点は、体サイズとは関係がなかったが、胸たたきをする個体の特定を可能にすると考えられた。
マウンテンゴリラが生息しているうっそうとした熱帯林では、自分以外の個体を視認することが難しい。Wrightたちは、胸をたたく音によって熱帯林での意思疎通が可能になると考えており、マウンテンゴリラが胸たたきによって伝えられる情報を使って、配偶者の選択に役立つ情報を提供し、競争相手の戦闘能力を見積もっているのかもしれないと推測している。
doi:10.1038/s41598-021-86261-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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