天文学:初期宇宙の爆発事象が、捉えにくいブラックホールを明らかにする
Nature Astronomy
2021年3月30日
宇宙誕生から30億年後に生じた爆発からの歪んだ光が、中間質量のブラックホールを明らかにする可能性があることを示した論文が、Nature Astronomy に掲載される。この知見は、ブラックホールの形成や、低質量ブラックホールが超大質量ブラックホールになる過程を理解する手掛かりとなる可能性がある。
中間質量ブラックホールは、低質量ブラックホールと大質量ブラックホールの間の進化的な中間点であると考えられているが、中間質量ブラックホールの存在を示す観測的な証拠は乏しく、確定的ではない。中間質量ブラックホールがどの程度存在するかを計測することは、ブラックホールがどのように形成され、時間とともにどのように成長するかを理解する手掛かりとなる可能性がある。
今回、James Paynter、Rachel Webster、Eric Thraneは、重力レンズ効果の兆候を調べるために、数千個のγ線バースト(恒星の激しい崩壊や2個の星の合体の後に起こる明るい爆発)を解析した。重力レンズ効果は、レンズとして機能する物体が、こうした遠方の爆発の放射を遮断して歪める際に生じ、異なる時間に観測される複数の像を生み出す。この時間の遅れは、他の方法では見ることのできない暗い「物体」の存在を特定する上で重要である。著者たちは、重力レンズ効果の証拠を示すγ線バースト事象を特定し、これを介在している物体の質量が太陽のおよそ1万倍であると推定し、この物体が中間質量ブラックホールの有力な候補であるとしている。
こうした捉えにくいブラックホールの存在量や、それらが他のブラックホールの種族の進化に及ぼす影響を理解するためには、さらなる研究と検出が必要である。
doi:10.1038/s41550-021-01307-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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