Research Press Release

疫学:SARS-CoV-2の南アフリカ型変異株の解析

Nature

2021年3月9日

2020年末頃に南アフリカの一部地域で急速に優勢になった重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の新規変異株は、流行の第1波の後に東ケープ州の沿岸部で出現した可能性があることを示唆する研究論文が、Nature に掲載された。この変異株は、複数の地域でSARS-CoV-2の他の系統を急速に駆逐しており、他の株に対する優位性を示している。優位性の原因は、感染力が増したことと免疫系を回避できることのいずれか一方、または両方である可能性がある。

南アフリカにおけるSARS-CoV-2流行の第2波は2020年10月頃に始まり、東ケープ州、西ケープ州とクワズール・ナタール州の一部地域で特に急速に進んだため、ゲノム監視が強化された。今回、南アフリカゲノム監視ネットワーク(NGS-SA)とTulio de Oliveiraたちの研究グループは、2020年3月5日~12月10日に収集された南アフリカ由来のSARS-CoV-2の全ゲノム(2882例)を解析して、SARS-CoV-2の新規変異株(501Y.V2/B.1.351と命名)を同定した。この解析データは、この新規変異株が、2020年8月頃にネルソン・マンデラ・ベイ都市圏で出現し、同年末までに東ケープ州、西ケープ州とクワズール・ナタール州で優勢系統になったことを示唆している。

501Y.V2変異株は、ウイルスの細胞への侵入を媒介するスパイクタンパク質の8つの変異を特徴としている。これらの変異の1つであるN501Yは、英国で同定された変異株(B.1.1.7)にも存在し、ヒトACE2受容体に結合しやすくなることと関連している。もう1つの変異であるE484Kは、中和抗体に対する抵抗性に関連するものとされている。501Y.V2変異株の分布と感染拡大に関するデータは、ゲノム解析によって得られた知見と相まって、501Y.V2変異株の感染力が、他のSARS-CoV-2系統よりも強い可能性を示唆している。しかし、これらの変異の完全な意味はまだ明らかになっておらず、さらなる研究が必要だとde Oliveiraたちは結論付けている。

doi:10.1038/s41586-021-03402-9

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

「注目のハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度