遺伝学:アフリカ人集団における遺伝的多様性
Nature
2020年10月29日
高深度塩基配列解読されたアフリカ人ゲノムの、これまでで最大級の研究から、300万を超える遺伝的バリアントが発見されたことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。今回の研究は、バントゥー諸語話者集団のルートに沿った古代人の移動に関する知見をもたらした。
アフリカは現生人類の起源において中心的な役割を果たしているにもかかわらず、アフリカ人集団に見られる多様性については、これまでほとんど知られていなかった。今回、H3アフリカコンソーシアムのZané Lombardたちは、これまでに試料採取されていなかった集団を含む50の民族言語集団に属する426人の全ゲノム塩基配列解読解析を行うことで、この不均衡の問題に取り組み、アフリカ全体のゲノム多様性の幅を探った。今回新たに発見されたバリアントの大部分は、今回新たに試料採取された民族言語集団から見つかっている。また、ウイルス免疫、DNA修復、代謝に関連する62の遺伝子とその周辺領域での自然選択の新たな証拠が見いだされた。さらに、祖先集団内および祖先集団間での混合に複雑なパターンが見られ、バントゥー諸語話者集団の拡大ルートに沿って移動した入植者の中継地点がザンビアであった可能性が高いことを示す証拠も見つかった。以上の知見は、アフリカ大陸内の人類の移動に関する理解を深めるものであり、ヒトの疾患に対する応答と遺伝子流動が、集団の多様性の強い決定要因であることを明らかにした。
Lombardたちは、人類の祖先をより包括的に理解し、健康研究を向上させるためには、アフリカ人のゲノム多様性に関する特徴解明の幅を広げること(対象者と対象集団を増やすことなど)が必要だと強調している。
doi:10.1038/s41586-020-2859-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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