Research Press Release
材料:レンガにエネルギーを貯蔵する
Nature Communications
2020年8月12日
従来の焼成レンガをエネルギー貯蔵ユニットに変換できることを報告する論文が、今週、Nature Communications に掲載される。この「スマートレンガ」は、バッテリーのように充電して電気を蓄えて、必要な時にデバイスの電源として使用することができる。
焼成レンガは、数千年間、建築材料として使用されてきたが、それ以外の用途がほとんどなかった。レンガで作られた壁や建物はすでに大きな空間を占めており、レンガを2つの目的に使うことができれば、こうした壁や建物をもっと有効に利用できる可能性がある。
今回、Julio D’Arcyたちの研究チームは、赤レンガをエネルギー貯蔵デバイスの一種であるスーパーキャパシターに変換した。彼らは、赤レンガの多孔質構造を利用して、レンガ全体にPEDOTと呼ばれる導電性ポリマー層を蒸着し、赤レンガをエネルギー貯蔵電極に変換した。赤レンガに含まれる赤色顔料である酸化鉄(錆)は、重合反応を引き起こす上で欠かせない。今回作製された概念実証デバイスでは、レンガからLED照明に直接電力供給できることが示された。
D’Arcyたちの計算によれば、こうしたエネルギー貯蔵用レンガでできた壁は、かなりの量のエネルギーを貯蔵できる。今回の成果によって、電気エネルギー貯蔵能力を有する付加価値型の多目的建築材料の開発が促されるかもしれない。
doi:10.1038/s41467-020-17708-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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