生態学:外洋の捕食魚類が潜んでいる場所
Nature Communications
2020年4月1日
サメ、マグロ、バショウカジキ、マカジキなどの大型魚による捕食は、赤道付近よりも温帯海域の方が多いことを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。この新知見は、捕食が、赤道付近で最も強く、魚類種の多様性の増加に関連しているという従来の仮説に疑問を投げ掛けている。
陸上と海洋の生物多様性は、いずれも赤道に向かって増加する傾向がある。しかし、これまでの陸上生態系の研究では、種間の相互作用が赤道付近で最も強いことを肯定する証拠と否定する証拠の両方が見つかっていた。一方、外洋における種間相互作用の地理的変動は、ほとんど解明されていない。
今回、Marius Roestiたちの研究チームは、餌を付けた縄に対する大型捕食魚類の攻撃(9億回以上)を記録した1960~2014年の遠洋延縄漁のデータセットの解析を行った。その結果分かったのは、捕食魚類の攻撃が、赤道付近よりも温帯(南緯・北緯約30~60度の中緯度帯)で頻繁に起こり、このパターンは、時がたっても変化せず、4つの海盆の全てで見られた。海洋哺乳類、海鳥類、深海魚類が主な捕食者となる南北の極域に近づくと、外洋性魚類による捕食は、再び減少した。
また、捕食魚類の攻撃は、外洋性魚類種の数と負の相関を示した。以上の結果は、海洋魚類の種分化(別個の新種の形成)の速度が赤道から離れるにつれて増加するという最近発表された知見を説明する上で役立つかもしれない。
doi:10.1038/s41467-020-15335-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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