持続可能性:電気自動車と家庭暖房の気候への正味の恩恵
Nature Sustainability
2020年3月24日
世界の59地域のうち53地域で、電気自動車や家庭の暖房に使われているヒートポンプによる炭素排出は、ガソリン自動車や化石燃料を使うボイラーより平均すると少ないことを示した報告が、Nature Sustainability に掲載される。
旅客の道路輸送と家庭の暖房は、全球の燃料燃焼による炭素排出量の24%を生成しているこの両方のシステムの電化は、自動車と家庭暖房によるその場での排出(直接排出)を抑制するが、発電による間接排出も生じさせると考えられる。炭素排出のライフサイクルアセスメントは、環境への製品や活動の影響を見積もるもので、直接排出の測定と間接排出の測定の両方を含んでいて、気候変動への輸送と暖房の電化の正味の恩恵を確定するのに役立つ可能性がある。
今回、Florian Knoblochたちは、炭素排出のライフサイクルアセスメントに関する文献の見積もりを分析し、経済の電力セクター、輸送セクター、暖房セクターを表現する統合アセスメントモデルを、スイス、米国、南アフリカ、ブラジルを含む世界中の59地域に適用した。著者たちが電気自動車とヒートポンプのライフサイクル全体の排出量を調べたところ、電気自動車とヒートポンプによる現在と将来のライフサイクル排出量は、さまざまな技術シナリオと政策シナリオの下で、個々の国家の大半だけでなく全球的に、平均するとガソリン自動車や化石燃料ボイラーより少ないことが見いだされた。
今回の知見は、将来の電化が電力セクターの急速な脱炭素化と釣り合っていなくても、電気自動車とヒートポンプへの移行によって、世界の大半の地域で化石燃料を用いた自動車や暖房と比べて炭素排出量が削減される可能性を示唆している。
doi:10.1038/s41893-020-0488-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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