Research Press Release
【生体医用工学】ニューロンの働きをシリコンチップに再現する
Nature Communications
2019年12月4日
生体ニューロンの電気的挙動を再現するシリコンチップの製造方法を示した論文が、今週掲載される。この研究アプローチは、病気によって諸機能の調節ができなくなった場合に神経系の生体回路を修復するバイオニックチップの開発にもたらす可能性がある。
今回、Alain Nogaretたちの研究グループは、イオンチャネルをモデル化した微小回路を設計した。この回路には未処理の神経刺激が集積されており、生体ニューロンと同じように応答する。そして、個々の海馬ニューロンと呼吸ニューロンの活動がシリコンチップに再現された。Nogaretたちは、60種の電気刺激プロトコルにおいて、今回開発されたソリッドステートのニューロンが、生体ニューロンとほぼ同じ電気的応答を生み出すことを見いだした。
Nogaretたちは、今回の研究でモデル化されたような呼吸ニューロンが、呼吸リズムと心拍リズムを同調させ、呼吸性洞性不整脈の原因となることを指摘している。そして、この同調が加齢や疾患によって失われることは、睡眠時無呼吸と心不全の予後である。Nogaretたちは、呼吸ニューロンと同じようにバイオフィードバックに適応するデバイスが将来的に治療法となる可能性があると考えている。
doi:10.1038/s41467-019-13177-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
動物学:雌のボノボは団結し、雄に対して優位性を発揮するCommunications Biology
-
量子物理学:通信インフラを活用した長距離量子通信Nature
-
人類学:カルタゴとフェニキアの間に家族的なつながりはほとんどないNature
-
気候変動:温暖化が進む世界で急激な「気温の変化」が増えているNature Communications
-
健康:高血圧の治療は認知症リスクを低減するかもしれないNature Medicine
-
気候:都市のヒートアイランド現象による気温関連死の評価Nature Climate Change