Research Press Release
口蓋の差が、母音の進化を方向付けてきた可能性
Nature Human Behaviour
2019年8月20日
ヒトの口蓋の形状は、異なる言語集団にわたる小さな系統的な発話パターンに影響を及ぼしている可能性のあることを示した論文が、今週掲載される。
言語は、文法や語だけでなく音も異なる。これまでの研究では、言語の進化に対する文化的および環境的な影響に焦点が合わせられていた。声道の構造に差異があっても、言語の多様性にはほとんど影響はないと考えられてきた。
今回Dan Dediuの研究チームは、ヒトの口蓋の形状が、異なる語族で聞かれる5つの母音の発音にどのように影響を及ぼすかについて調べた。4つの広域の民族言語グループ(ヨーロッパ人およびヨーロッパ系の北米人、北インド人、南インド人、中国人)を代表する被験者107人のMRIスキャンに基づくコンピューターモデルを用いた結果、全てのグループにおける硬口蓋のさまざまな形状が、5つの母音全ての音響および調音のわずかな差を生むことが明らかとなった。Dediuたちはさらに、そうした個人レベルの発話の特異性は、世代を経るごとにさらに大きくなった可能性があることを示している。
研究チームは、言語の進化に声道の構造が果たす役割を深く理解するためには、さらなる研究が必要だと結論している。
doi:10.1038/s41562-019-0663-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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