Research Press Release
【医学研究】マウスの骨からウランを除去する化合物
Nature Communications
2019年6月26日
放射性元素のウランに被曝したマウスの骨と腎臓からウランを除去できる化学薬品について報告する論文が、今週掲載される。この結果は、この化合物がウランに被曝したヒトに使用できる薬剤として有望視される可能性を示唆しているが、今後さらなる試験を行う必要がある。
ウランは原子力発電にとって重要な資源だが、放射性毒性と化学毒性のために健康へのリスクがある。被曝後にウランの約2/3は腎臓を介して体外に除去されるが、残りは腎臓と骨に残存し、腎臓の損傷や骨欠損とがんのリスク増加を引き起こす可能性がある。体内に吸収されたウランの除去は、キレート剤と呼ばれる分子を使用すると実現可能だが、既存の製剤は、骨からウランを効率的に除去できず、毒性が高いものもある。
今回、Shuao Wangたちの研究グループは、既存のヒドロキシピリジノンを基にしたキレート剤を改良して、骨中のウラン錯体との親和性が向上したキレート剤を作製した。Wangたちは、このキレート剤がマウスの腎臓と骨からウランを効率的に除去でき、他のキレート剤と比較して毒性が低いことを実証し、さらに、この化合物を経口投与した場合にも有効性が維持されることを明らかにした。
doi:10.1038/s41467-019-10276-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
化石:最も古く知られている「爬虫類」の足跡Nature
-
惑星科学:月内部の非対称性を示す証拠Nature
-
古生物学:「シカゴ」始祖鳥が、この古代鳥に新たな知見をもたらすNature
-
理論物理学:二体問題を解くNature
-
がん:乳がん治療薬の臨床試験で生存率の向上が示されたものの、がんの消失は限定的であったNature Communications
-
Nature Scientist at Work コンペティションの受賞者の発表Nature