Research Press Release
天体物理学:宇宙で最初に生じた分子イオンが現在の宇宙で検出された
Nature
2019年4月18日
宇宙で最初に生じた分子イオンとされる水素化ヘリウムイオンHeH+が、現在の宇宙空間で初めて検出されたことを報告する論文が、今週掲載される。この新知見により、数十年間にわたる探索に終止符が打たれた。
ヘリウム原子と陽子からなる水素化ヘリウムイオンは、初期宇宙で形成された初めてのタイプの分子結合だった。時がたつと、水素化ヘリウムイオンは崩壊し、水素分子とヘリウム原子が形成された。水素化ヘリウムイオンの存在は、1925年に初めて実験室で実証されたが、宇宙空間では検出されていなかった。
これまでも宇宙空間で水素化ヘリウムイオンを検出する試みがなされてきたが、既存の分光計が、適した波長で十分な分解能が得られないためにあまり成果を挙げられていなかった。これに対して、SOFIA(遠赤外線天文学成層圏天文台)に搭載された高分解能分光計GREAT(German Receiver for Astronomy at Terahertz Frequencies)は、水素化ヘリウムイオンが発すると考えられている赤外輝線を検出できる。今回、Rolf Gustenたちの研究グループは、2016年5月のSOFIAの3度の飛行で得たデータを使って、惑星状星雲NGC 7027において水素化ヘリウムイオンを検出した。NGC 7027は年齢が若く、初期宇宙の状態に近いため、水素化ヘリウムイオンが生成されている天体の候補として有力視されていた。
doi:10.1038/s41586-019-1090-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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