Research Press Release
【天文学】天の川銀河の構造は別の銀河との衝突合体によって形成された
Nature
2018年11月1日
約100億年前に起こった天の川銀河と別の銀河との衝突合体によって天の川銀河の内側の恒星ハローが形成され、銀河円盤が厚みを増したことを報告する論文が、今週掲載される。
天の川銀河を構成する構造として、中心バルジ、渦状腕、円盤とこの円盤を取り巻くハローがある。こうした天の川銀河の構成要素の形成過程は、個々の星の年齢、化学組成、分布、および運動を調べることで解明することが可能だ。これまでの銀河形成モデルに基づく研究では、天の川銀河のハローが他の銀河との数回の合体によって形成されたことが示唆されてきたが、こうした衝突合体現象の正確な内容や時期、回数は分かっていなかった。
今回、Amina Helmiたちの研究グループは、最近公表された宇宙望遠鏡「ガイア」の観測データとAPOGEE恒星探査プロジェクトのデータを解析し、天の川銀河の内側のハローに分布する恒星の大半が約100億年前に起こった矮小銀河(衝突当時の質量は天の川銀河の約4分の1)との衝突合体に由来するものであることを発見した。Helmiたちは、このサイズの矮小銀河との衝突合体によって、すでに存在していた銀河円盤が加熱されて厚みを増し、現在の姿になったと結論付けている。
Helmiたちは、天の川銀河に衝突した銀河を「ガイア-エンセラダス」と命名した。これは、宇宙望遠鏡ガイアとギリシャ神話の巨人エンセラダス(ガイアの子)にちなんだ名前だ。
doi:10.1038/s41586-018-0625-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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