Research Press Release
【動物学】アフリカゾウの皮膚に微細な割れ目が広範に見られる理由
Nature Communications
2018年10月3日
アフリカゾウの皮膚の表面には網状の割れ目が見られるが、その原因は、表皮が増殖する時に生じる物理的なひび割れだとする知見を報告する論文が、今週掲載される。
物理的割れ目のパターンは、非生物において発生することが多く、生物系で生じるのはまれである。アフリカゾウの皮膚には、マイクロメートル幅の割れ目が互いにつながって形成された複雑な網目模様が深く刻み込まれている。この割れ目により、保水性は平面の場合の5~10倍に向上しており、これによって熱調節と寄生虫予防の有効性も高まっている。ただし、この割れ目の形成過程は解明されていない。
今回、Michel Milinkovitchたちの研究グループは、顕微鏡観察と物理学に基づくモデル化によって、この割れ目が皮膚の最外層(角質層)の破断だとする考えを示している。Milinkovitchたちは、この皮膚の割れ目が、徐々に増殖する表皮の曲げ応力によって発生する物理的ひび割れによって生じると考えている。この仮説は、このような割れ目がゾウの新生仔には見られないという観察結果からも裏付けられている。
この割れ目パターンがアジアゾウの皮膚には見られない理由、およびアフリカゾウの皮膚細胞の生理学的特徴を解明するには、さらなる研究が必要とされる。
doi:10.1038/s41467-018-06257-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
化石:最も古く知られている「爬虫類」の足跡Nature
-
惑星科学:月内部の非対称性を示す証拠Nature
-
古生物学:「シカゴ」始祖鳥が、この古代鳥に新たな知見をもたらすNature
-
理論物理学:二体問題を解くNature
-
がん:乳がん治療薬の臨床試験で生存率の向上が示されたものの、がんの消失は限定的であったNature Communications
-
Nature Scientist at Work コンペティションの受賞者の発表Nature