感染症:抗体療法によるHIV-1抑制とウイルス量低減
Nature
2018年9月27日
抗レトロウイルス療法(ART)を中断している間でも、2種類のモノクローナル抗体を用いる治療法によって、HIV-1抑制を持続させ、ウイルス量(血中を循環するウイルスの量)を低減させた2つの小規模第1b相臨床試験について報告する2編の論文が、今週、NatureとNature Medicineにそれぞれ掲載される。
HIV-1感染者は、HIV-1を抑制するためにARTを生涯にわたって受け続ける必要があり、治療を中断するとHIV-1リザーバが再び活性化してしまうことがある。これまでの複数の研究で、強力かつ広範に作用する抗HIV-1モノクローナル抗体が、ARTに代わりHIV-1を中和する治療法となる可能性が示唆されていた。
今回、Michel Nussenzweigたちの研究グループは、2つの第1b相臨床試験で、2種類の抗HIV-1モノクローナル抗体(3BNC117と10-1074)がHIV-1抑制を持続させ、ウイルス量を低減させる効果を評価した。
Natureに示される臨床試験では、15人の被験者に対し、ART中止後に静脈投与による抗体併用療法を3週間おきに計3回実施した。なお、4人の被験者はART中止後のウイルス量が高過ぎたために解析対象から除外された。この抗体療法により、5~30週間(中央値21週間)にわたってウイルス抑制が持続した。
また、Nature Medicineに示される臨床試験では、血中にHIV-1が検出され、ARTを受けたことのない7人の被験者に対し、静脈投与による抗体併用療法を1か月間に1回、あるいは3回実施した。その結果、被験者の当初のウイルス量とウイルス感受性に応じて、ウイルス量が減少し、その状態が3~16週間持続した。
これら2つの臨床試験から、この抗体療法は、被験者において一般的に高い忍容性が示されたが、抗体耐性ウイルスが存在する場合やウイルス量が高い場合に、この治療法の有効性が低下するようであった。Nussenzweigたちは、抗体感受性ウイルスの保有者には、ARTを実施しなくても、これら2種類の抗体を併用することでHIV-1を抑制できるが、この知見を確認するためには、より大規模な臨床試験を実施する必要があると結論付けている。
doi:10.1038/s41591-018-0186-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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