【海洋科学】サンゴ礁の護岸効果が気候変動によって低下
Nature
2018年6月14日
熱帯西大西洋とインド洋におけるサンゴ礁の現在の成長速度は、予測されている海面上昇速度に何とか追いついている状態であることを明らかにした論文が、今週掲載される。しかし、サンゴ礁は世界中の熱帯と亜熱帯の海岸線を保護しているため、今回の研究結果から、小さな島国にとって、洪水と浸食に対する護岸に寄与する非常に重要な要素が失われる可能性があると示唆されている。
海面上昇が起こると、サンゴ礁上の水深が上昇し、海岸線が浸食されやすくなると予測されている。ところが、この予測には局所的なサンゴ礁の成長と海面水位の相互作用に関するデータが欠けている。
今回、Chris Perryたちの研究グループは、熱帯西大西洋とインド洋のサンゴ礁(200か所以上)の垂直成長能力を計算し、これらの値を最近の海面上昇速度、および今後予想される海面上昇速度と比較した[今後の予想値は、気候変動に関する政府間パネルの温室効果ガス濃度の代表的濃度経路(RCP)の複数のシナリオに基づく]。多くのサンゴ礁は、最近の海面上昇傾向に近い速度で成長しているが、生態系の回復なしにRCP 4.5シナリオによる海面上昇速度の予測値に追随できるサンゴ礁は非常に少なく、RCP 8.5シナリオでは2100年の時点で大部分のサンゴ礁の水深の上昇が平均で0.5メートルを超えるという予測が示された。
また、Perryたちは、その他の主要な気候関連問題、特にサンゴの白化によって、サンゴ礁の成長能力が大きく低下することを明らかにした。海洋の酸性化、および海水温の上昇がサンゴの石灰化に及ぼす影響もさらなる脅威であり、サンゴの成長が阻害され、結果として海岸線の浸食がさらに起こりやすくなる可能性がある。
doi:10.1038/s41586-018-0194-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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