原子時計を野外で初めて用いた測量
Nature Physics
2018年2月13日
携帯型原子時計を野外で初めて用いて測量を行ったことを報告する論文が、今週掲載される。携帯型光原子時計を用いて、アルプス山脈の山にある研究所の高度が測定されたのである。今回の研究は、将来原子時計を重力測定に利用するための原理実証となる。
原子時計は、10の17乗分の1というとてつもなく正確なレベルで時間を測定できる。この感度によって、地球上の高度の差による重力場の強さの変化に起因して生じるはずであると一般相対論から予想される、限りなく小さな時間の流れの変化を検出できる。これは、極めて正確な時計が重力センサーとして使えるということである。原子時計の高い感度には、注意深く管理された条件が必要であり、計測学の研究所の外でこうした条件を作るのは非常に難しい。
今回、C Lisdatたちは、フランスアルプスの地下にある2.2 × 3 × 2.2 mのトレーラーの内部に携帯型原子時計を設置し、その挙動を、約100 km離れていて1000 m高度の低いイタリアの研究所にある原子時計の挙動と比較した。彼らは、フレジュス道路トンネルの中央という理想にはほど遠い現実的な条件で稼働する原子時計を用いて、山の中の研究所の高度を見積もり、これとは別の2種類の最先端の測地(「地球の形状」)測量法から得られた独立した測定結果とこの見積もりが一致することを示している。この測地測量法の1つは、衛星測位システムによる光学的な水準測量と重力場モデルを組み合わせたものである。
著者たちは、今回の測定の精度は従来の測地法で実現できる精度よりずっと低いが、今回の測定キャンペーンは、大きな技術的課題を克服したことで地球物理学への原子時計の実際的な応用への重要な一歩になる、と述べている。
doi:10.1038/s41567-017-0042-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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