【老化】がんから変性疾患への遺伝的変化
Nature Communications
2018年1月31日
老化に関連した遺伝子発現の変化は、慢性変性疾患において観察される変化に類似しているが、がんにおいて観察されるものとは逆方向であることを報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、老化後期にあるヒト集団における主な死因ががんから慢性変性疾患へ移行するという観察結果に関する手掛かりとなっている。
今回のChristoph Kaletaたちの研究では、さまざまな年齢の4種の生物(ヒト、マウス、ゼブラフィッシュ、メダカ)の4種類の組織の老化関連遺伝子発現プロファイルからなる大規模なデータセットが作成された。また、Kaletaたちは、一般公開されている老化関連疾患の患者のデータも解析した。その結果、老化期の遺伝子発現パターンが慢性変性疾患において観察されたパターンと同じ方向に変化しており、この方向ががんにおいて観察された方向とは逆であることが判明した。これと同様の拮抗関係はゲノムレベルでも観察され、がんと変性疾患に共通する数多くのリスクアレルがそれぞれの疾患のかかりやすさに対して逆の影響を及ぼしていた。さらにKaletaたちは、老化が関与する疾患過程の主たる要因が免疫系と細胞分裂関連過程に関連していることを明らかにした。
今回の研究の結果、がんと慢性変性疾患とのトレードオフ関係が明らかになり、2つの疾患の有病率が老化期に変化することを解明するための手掛かりが得られた、とKaletaたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41467-017-02395-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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