【遺伝学】ランの起源を突き止めるためのゲノム塩基配列解読
Nature
2017年9月14日
ラン科のApostasia shenzhenicaのゲノム塩基配列について報告する論文が、今週に掲載される。A. shenzhenicaは、中国南東部に見られる自殖性のラン種で、多様で広範に生息するラン科植物の起源と進化に関する新たな知見が今回の研究によって得られた。
ラン科植物は、顕花植物種の約10%に相当し、その形態と生活様式は非常に多様で、地球上のほとんど全ての生息地で定着に成功している。ラン科のApostasia属(ヤクシマラン属)は、もう1つの属と共に、初期に分岐し、その他のラン科植物の姉妹系統群を形成している。今回、Zhong-Jian Liu、Yves Van de Peerたちの研究グループは、Apostasia属に分類されるA. shenzhenicaの全ゲノム塩基配列について報告し、それに加えて、ランの別の3つの亜科に属する植物のトランスクリプトーム(植物の遺伝子発現を制御するRNA分子の総体)のデータとさらに別の亜科の植物2種の新しい高品質ゲノムデータを示している。
Liuたちは、A. shenzhenicaの全ゲノム塩基配列に全ゲノム重複の発生を示す明白な証拠を発見し、全ゲノム重複が、全てのラン科植物で起こり、それらの分岐の直前に起こったと考えている。また、Liuたちは、他のラン科植物と顕花植物との比較を行って、ラン科植物の祖先種の「遺伝子の道具箱」を再現した。この道具箱は、ラン科植物の重要な新機軸の基盤となっている遺伝的機構の解明に役立つものといえる。そうした重要な新機軸には、唇弁(昆虫を引き寄せるための花の「唇」)、生殖構造体の一種であるずい柱、着生(別の植物に付着して生育すること)の進化が含まれている。
doi:10.1038/nature23897
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