脳細胞の再プログラミングでパーキンソン病を治療
Nature Biotechnology
2017年4月11日
パーキンソン病ではドーパミン神経が失われるが、脳の非神経細胞に特定の組み合わせの分子を与えることによって、ドーパミン神経に似た細胞を作り出せるという報告が寄せられている。この新しい再プログラミング法がうまく働くことが、培養ヒト細胞とマウスのパーキンソン病モデルで実証されている。
パーキンソン病の決定的な特徴は、ドーパミンを分泌する特殊なニューロンが次第に死んでいくことである。ドーパミン前駆体となる薬剤の投与など、いくつかの治療法があるが、病気の経過を変えるものはない。ドーパミン神経やその前駆細胞を実験室で作り、脳に移植するという疾患修飾療法を開発しようと、数十年にわたって研究が行われている。
Ernest Arenasたちが報告しているのは、細胞移植を必要としない、別のやり方での細胞置換である。ドーパミン神経がドーパミン神経であるために重要な働きをするとされる多くの遺伝子を調べたところ、4つの遺伝子が、特定の低分子類と組み合わせると、ヒトの星状膠細胞と呼ばれる脳細胞をドーパミン神経に似た細胞に変化させることが明らかになった。
この方法による治療の可能性を検証するため、マウスにドーパミン神経を殺す毒素を投与し、星状膠細胞だけで遺伝子が発現するよう設計した系を利用して、この4つの遺伝子を脳に導入した。すると、一部の星状膠細胞がうまく再プログラミングされてドーパミン神経の性質を獲得し、ドーパミン神経の喪失によって生じた行動症状がいくつか正常化した。ただし、この方法のヒトでの臨床試験を考えるまでには、まだかなりの研究が必要だとArenasたちは述べている。
doi:10.1038/nbt.3835
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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