【進化】親の社会的つながりを相続する動物
Nature Communications
2016年6月29日
仔が親の社会的つながりを高度に相続することを組み込んだ動物の社会的ネットワークのモデルが現実世界における動物の社会的ネットワークに類似しているという見解を示した論文が、今週掲載される。この論文の著者は、動物界での社会的ネットワークの構造と社会的地位の相続をモデル化し、このモデルが、ハイエナ、ロック・ハイラックス、バンドウイルカ、マツカサトカゲなどの動物の現実世界の社会的ネットワークの特性と一致していることを明らかにした。
社会的ネットワークの構造(例えば、社会的相互作用の数、相互作用がネットワーク内のサブグループに集中する程度)は、情報の流れや病気の蔓延など重要な進化過程と生態学的過程に影響を与えることがある。しかし、動物界での社会的相互作用の構造の根本原因については解明が進んでおらず、社会的ネットワークの形成のモデル化を試みた過去の研究では、その複雑な構造を再現することができなかった。
今回、Erol Akcayたちは、新生仔が母親のコネを相続できることを前提とした仮説上の社会的ネットワークと不特定多数の個体と結びつきを形成できることを前提とした仮説上の社会的ネットワークをモデル化した。高度な社会的相続をできるシミュレーションでは、新生仔の社会的ネットワークでの地位と新生仔が形成した結びつきの数が母親の場合と相関していた。高度な社会的相続が組み込まれたモデルを用いた社会的ネットワークのシミュレーションは、既発表論文に記述されたブチハイエナ(Crocuta crocuta)、ロック・ハイラックス(Procavia capensis)、バンドウイルカ(Tursiops spp.)とマツカサトカゲ(Tiliqua rugosa)の現実世界の社会的ネットワークと非常によく似ていた。
この相続された社会的つながりが成体期まで持続するかどうかという問題に答えは出ていないが、今回の研究結果は、社会的相続が自然群集におけるネットワーク構造の重要な駆動要因であることを示唆している。
doi:10.1038/ncomms12084
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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