南極の氷の消失はどの程度まで許容できるのか
Nature Climate Change
2016年2月9日
南極氷床の海に浮かんでいる部分(棚氷)の抑制効果によって南極氷床の岩盤に載っている部分が海中に滑り落ちないようになっているという観点に基づいて地図が作成され、それぞれの棚氷地域で許容される氷の消失の程度が示された。一部の棚氷地域では、広い面積が消失しても、残った棚氷に直ちに影響が及ばないが、多くの棚氷地域では、氷の消失があっても大きな影響を生じないという部分は少ないか、ほとんどないことが、今回の研究で示唆されている。詳細を報告する論文が、今週掲載される。
南極氷床の融解は、全球海水準上昇に重大な影響を及ぼすが、海に浮かんだ棚氷は、岩盤に載っている氷床を支えて、海洋への氷床の流出を防いでいる。ところが、そうした支えにとって不可欠な棚氷の面積が正確に定量化されたことはない。
今回、Johannes Furstたちの研究グループは、南極のそれぞれの棚氷について、上流側の氷を支える効果がほとんどないか、まったくなく、たとえ消失しても影響がほとんどない地域(passive shelf ice(PSI)と命名された)を計算し、その地図を作成した。その結果、PSIが氷床全体の約13%であり、アムンゼン海の棚氷(その7%がPSI)とベリングスハウゼン海の棚氷(その5%がPSI)で今後さらなる氷の消失が最も起こりやすいことが判明した。これらの棚氷では過去20年間に薄化が進んでおり、その上流側の氷床が逆傾斜している岩盤に載っており、これが海洋氷床の不安定性の前提条件であるため、これらの棚氷をモニタリングして、PSI以外の地域で割れ目の監視をすることが緊急に必要とされている、とFurstたちは結論づけている。
doi:10.1038/nclimate2912
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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