イングランド南部の洪水に対する人間の影響
Nature Climate Change
2016年2月2日
イングランド南部における2013~2014年の冬の洪水に人為起源の気候変動の直接的な影響があったことを報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。この研究では、洪水につながった異常降雨の原因が、地球温暖化に関連する2つの因子、つまり、大気の保水力の増加(熱力学的変化)と1月に偏西気流が観測された日数が増えたこと(力学的変化)だったことが明らかになった。
2013~2014年の冬にイングランド南部に到達した一連の暴風雨は、大洪水を引き起こし、付保損失額が4億5100万ポンド(約766億円[1英ポンド=170円で換算])に達した。当時、この現象に人為起源の気候変動が寄与した可能性が盛んに論じられていた。
今回、Nathalie Schaller、Neil Masseyたちの研究グループは、weather@homeという市民科学プロジェクトを利用して、現在の気候条件下と大気が人間の影響を受けていないとする条件下で2014年1月の気象をモデル化した。Schallerたちは、降水量の変化(熱力学的変化)と大気循環の変化(力学的変化)を調べた上で、人為起源の気候変動によって、2013~2014年の冬に観測されたような100年に一度という大規模な降水現象のリスクが43%上昇し、このリスク上昇分の約67%が熱力学的変化により、約33%が力学的変化によると推定した。また、Schallerたちは、テムズ川流域の水文学的マッピングを行い、2013~2014年の洪水の場合には、大気循環と降水の変化によって30日間流量のピーク値が増加したことを示し、洪水危険地域図を使って、テムズ川流域の各種財産に関する洪水リスクが少し上昇したことを明らかにした。
doi:10.1038/nclimate2927
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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