Research Press Release

気候変動:温暖化によるサンゴ礁の緩衝機能の危機

Nature

2025年9月18日

熱帯西部大西洋のサンゴ礁の70%以上が2040年までに侵食状態に陥ると予測され、温暖化が産業革命前より2℃を超える場合、2100年までにほぼすべてのサンゴ礁が侵食されるかもしれないことを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。このようなサンゴ礁の減少は、海面上昇の影響をさらに悪化させると予想される。この結果は、サンゴ礁の損失を減らすためには、サンゴ礁の回復と気候変動緩和の両方に向けた戦略が必要であることを示している。

サンゴ礁は、浅海域で波のエネルギーを吸収することで沿岸部を洪水から守るが、この機能は気候変動によって脅かされている。温暖化は、サンゴ礁の成長を阻害し、温暖化に伴う海面上昇はサンゴ礁の緩衝効果を低下させる。海面上昇がサンゴ礁の成長に及ぼす影響の程度を理解することは、熱帯の海岸線と周辺生態系へのリスク予測に役立つ。

この問題に取り組むため、Chris Perryら(エクセター大学〔英国〕)は、化石サンゴ礁堆積物を分析し、熱帯西部大西洋全域の400以上のサンゴ礁地点における成長速度を特定した。これらのデータを海面上昇予測値と組み合わせ、異なる排出シナリオ下で2100年までのサンゴ礁成長と海面上昇速度の相互作用を将来予測した。熱ストレスおよび酸性化がサンゴ礁の侵食速度に及ぼすと予測される影響も計算に組み込まれた。著者らは、熱帯西部大西洋のサンゴ礁の70%以上が2040年までに純侵食状態に移行し、温暖化が2℃を超える場合、2100年までにほぼすべてのサンゴ礁がそれに達すると推定している。さらに、水深は2060年までに約0.3~0.5メートル増加すると推定され、温暖化が2℃を超える場合、2100年までに最大1.2メートル増加する可能性がある。これにより、近隣の沿岸地域における洪水のリスクが高まると推定されている。

著者らは、サンゴ礁の回復努力が予測される損失に対処する可能性はあるものの、気候緩和策と組み合わせた場合にのみ、海面上昇を0.3~0.4メートル程度軽減できるに過ぎないと指摘している。著者らは、サンゴ礁に面した沿岸地域への海面上昇の影響を制限するには、温暖化を2℃未満に抑えることが極めて重要であると結論づけている。

Perry, C.T., de Bakker, D.M., Webb, A.E. et al. Reduced Atlantic reef growth past 2 °C warming amplifies sea-level impacts. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09439-4

doi:10.1038/s41586-025-09439-4

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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