Research Press Release
【免疫学】HIV潜在感染リザーバーを浄化するための抗体
Nature Communications
2015年10月21日
特別に設計された抗体を用いてヒト免疫不全ウイルス(HIV)に潜在感染した細胞を除去するという新しい方法を報告する論文が、今週掲載される。潜在感染しているウイルスは、休眠状態にあり、免疫系と抗ウイルス薬に認識されない。将来的には、この抗体が、HIVに感染した患者が持つHIV含有細胞を減らすために役立つ可能性がある。
今回、John Mascola、Gary Nabelたちの研究グループは、HIVに潜在感染した細胞を活性化し、そこへキラーT細胞を誘導して破壊させるという2つの作用を有する抗体を開発した。この抗体は、患者から単離したHIV感染細胞によるHIVタンパク質の産生を誘発できる。その結果、このHIV感染細胞は免疫細胞によって認識され、容易に狙い撃ちされるようになった。この抗体治療薬は、ヒト以外の霊長類における耐容性が良好で、臨床試験を実施しうることが明らかになった。
HIVは、潜在感染した細胞において休眠状態で存続するため、HIV感染症の治癒が未解決の難題となっている。こうしたHIV潜在感染リザーバーを浄化することは、感染者の体内からHIVを完全に除去することに向けた重要な一歩だ。今回の研究で開発された抗体は、この目標への一歩前進となる可能性を秘めているが、前臨床動物モデルとヒトにおける有効性を評価する必要がある。
doi:10.1038/ncomms9447
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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