注目の論文

動物学:カエルやヒキガエルの体色は見かけだけじゃない

Nature Communications

2023年12月20日

Zoology: Colouration may be more than skin-deep for frogs and toads

カエルやヒキガエルの体色の多様性は、環境ストレスや病原体から身を守るために役立っている可能性のあることが、3000種以上を対象とした研究で示された。このことを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。この知見は、カエルやヒキガエルの体色が、気候が変化する中で生き残る能力に影響を与えている可能性があることを示唆している。

両生綱無尾目(カエルやヒキガエル)は、5000種以上から構成される多様性の高い分類群で、体色が極めて多彩だ。例えば、毒があることを捕食者に警告するための鮮やかな体色や、カムフラージュ(擬態)によく適応した体色などがある。体色については、これまでの他の動物に関する研究から、これらの特殊な機能よりもさらに重要な役割を果たしている可能性が示唆されているが、これを検証するためには、幅広い環境条件で数多くの種を研究する必要がある。

今回、Ricarda Laumeierらは、カエルやヒキガエルの体色の明度が、体温調節、紫外線Bの照射(UVB)に対する防御、病原体耐性にどのように関連するかを調べた。今回の研究では、カブトシロアゴガエル、マダラヤドクガエル、コガタナゾガエル、レスプレンデントグラスフロッグをはじめとする3059種のデータが世界中から集められた。これは、無尾目の既知種全体のほぼ半数に相当する。これらのカエルの体色は、寒冷な地域(例えば山岳地帯や北緯度地方)になると一般的に暗い色になったが、UVBのストレスや病原体感染リスクが高い地域(マダガスカル、ペルー、エクアドルなど)でも同じ傾向が認められた。Laumeierらは、体色が明るいカエルやヒキガエルは熱耐性が高いが、その代償として、カエルツボカビ(両生類の流行性病原体)などの病原体やUVBに対する脆弱性が高くなっている可能性があるという見解を示している。また、今回の解析では、こうした要因が、無尾目の体色に地域差を生み出す上で重要な意味を持っており、熱帯域では病原体耐性の重要性が高く、温帯域では体温調節の重要性が高いことが明らかになった。

Laumeierらは、気候温暖化と侵入病原体によって世界中の両生類の個体数が減少しているため、今回の知見は、脆弱性の高いカエル種やヒキガエル種とその生息域を予測するために役立つ可能性があると結論付けている。

doi: 10.1038/s41467-023-43729-7

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