老化:哺乳類の老化と寿命を予測する「時計」
Nature
2026年5月28日
Ageing: ‘Clocks’ to predict ageing and lifespan in mammals
複数の哺乳類種および組織タイプにわたり、分子年齢と寿命の両方を正確に推定できる分子時計を報告する論文が、今週のNature にオープンアクセスで掲載される。ヒト、齧歯類、および霊長類の1万1000件以上のサンプルを分析した結果、老化に関する保存された特徴が明らかになった。この枠組みは、長寿を延ばすための標的を絞った介入法の開発に役立つ可能性がある。
老化は、細胞の損傷の蓄積と機能の低下を特徴とし、最終的には死にいたる。暦年齢が同じ個体でも、分子レベルでは異なる老化の進み方をすることがあり、こうした違いに関連するバイオマーカーの特定は、かねてより研究者の関心を集めてきた。既存の手法には、個体のDNAに対する経時的なエピジェネティックな修飾(非遺伝的変化)を分析する、いわゆる「エピジェネティック・クロック」が含まれる。しかし、これらのクロックは特定の遺伝子の活性を反映していないため、解釈が難しい場合がある。
Alexander Tyshkovskiy、Vadim Gladyshevら(ハーバード大学医学部〔米国〕)は、マウス、ラット、マカクザル、およびヒトに由来する25種類以上の組織から得られた1万1000以上の遺伝子転写産物(transcriptomic signatures;トランスクリプトームシグネチャー)を解析した。トランスクリプトームにおける老化関連の変化は、種や細胞タイプを超えて保存されており、これにより哺乳類の老化を示すいくつかのバイオマーカーを特定することが可能となった。細胞老化(細胞分裂の低下)、炎症、およびアポトーシス(プログラムされた細胞死)に関連する遺伝子は、老化した細胞において発現が上昇していた。一方、創傷治癒、細胞分化、および細胞外マトリックス合成に関連する遺伝子は、種や細胞タイプを問わず、暦年齢の経過とともに発現が低下していた。
著者らは、これらのデータを用いて、暦年齢を評価し、予測される死亡率を推定するための独自の多組織・多種の分子時計を開発した。これらのモデルは、統計的手法を用いて検証され、既存の動物および細胞レベルの老化モデルとの比較検証も行われた。この分子時計は、第2世代のエピジェネティック時計に匹敵する精度で死亡までの期間を予測した。また、エピジェネティックデータに比べトランスクリプトームが持つリアルタイム性により、寿命延長介入の有効性を分子レベルで評価することも可能となる。
同時掲載されるNews & Views記事の中で、João Pedro de Magalhãesは、本研究で特定されたマーカーが「介入や疾患によってどのプロセスが調節されているかを研究者が特定するのに役立つ可能性がある」と指摘している。これは、既存の方法では把握できない貴重な指標である。しかし、これらのバイオマーカーが老化とどのように関連しているのか、また、それらが原因なのか、あるいは単に老化プロセスの副産物に過ぎないのかを解明するには、さらなる研究が必要である。
- Article
- Open access
- Published: 27 May 2026
Tyshkovskiy, A., Kholdina, D., Davitadze, M. et al. Universal transcriptomic hallmarks of mammalian ageing and mortality. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10542-3
News & Views: Gene-expression patterns can be used to estimate mortality risk and chronological age
https://www.nature.com/articles/d41586-026-01326-w
News: Gene clock predicts time to death in humans – and assesses ‘biological’ age
https://www.nature.com/articles/d41586-026-01661-y
doi: 10.1038/s41586-026-10542-3
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