注目の論文

【生物工学】新しい抗体選択方法

Communications Biology

2018年1月23日

Biotechnology: New strategy for antibody selection

希少な自然発生抗体の迅速単離法について報告する論文が、今週創刊される新ジャーナルCommunications Biology に掲載される。この方法は、将来の生物学的治療薬とワクチンの開発に役立つ可能性がある。

ヒトが感染症にかかると、病原体上に存在する特異な断片(抗原)に対する抗体が、B細胞(白血球の一種)によって産生される。そして、感染症が終息した後も、ヒトの抗体のプールの中に、抗原を正しく認識する抗体を産生するB細胞が長期間にわたって非常に低いレベルで残留し、「B細胞レパートリー」を形成する。自然に産生される抗体は、疾患の治療薬の供給源となる可能性を秘めている。しかし、数十億種もあると考えられるB細胞のプールから特異な抗体を同定することは極めて難しく、既存の抗体選択方法は多大な費用と労力を要する。

今回、Saravanan Rajanたちの研究グループは、ヒトB細胞の大型プールから希少な抗体を同定するための新しい方法を開発した。Rajanたちは、均一の大きさの微小水滴を生成するガラス製マイクロ流体チップを使って、健康なドナーから得たB細胞の1つを、1個の水滴に封入した。この方法を用いると、100万のB細胞を1個ずつ水滴に封入する作業を40分以内で終わらせることができ、Rajanたちは、自然発生抗体を産生する数百万のB細胞が含まれる当初のプールから抗原特異的抗体を選択し、精製する作業を4週間で完了した。

Rajanたちは、このシステムを用いて、インフルエンザウイルスの複数のサブタイプを認識する抗体のスクリーニングを行った。この方法を用いた結果、7種類の希少な抗体が同定されたが、従来の方法では、これらの抗体を検出できる可能性は低いと考えられていた。Rajanたちは、この方法が将来の治療薬、特に急速に蔓延する感染症や新興感染症の治療薬の開発に役立つと考えている。

doi: 10.1038/s42003-017-0006-2

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