【微生物学】多発性硬化症患者の腸内微生物叢の変化
Nature Communications
2016年6月29日
Microbiology: Alterations of the gut microbiota in multiple sclerosis
多発性硬化症(MS)患者の腸内微生物叢の変化が、免疫防御遺伝子の発現の変化と相関していることが判明した。この腸内微生物叢の変化をMSの進行を評価するためのバイオマーカーとして将来的に利用できる可能性があるかどうかを見極めるには、さらなる研究が必要とされる。この研究成果を報告する論文が掲載される。
腸内細菌は、免疫系の機能に影響を及ぼすことが知られており、腸内微生物の数の変化が自己免疫疾患の発生と相関している。これまでに20人のMS患者と40人の健常者(対照)を用いた研究が行われ、MS患者の腸内微生物叢に変化があったことが分かっていたが、腸内微生物叢と治療法と免疫の変化の間につながりがあるのかどうかの研究は行われていなかった。
今回、Howard Weinerたちは、60人のMS患者と43人の健常者(対照)の腸内微生物叢のサンプルを採取して解析したところ、対照より患者の方がメタノブレビバクター(ヒトの腸内における主なメタン生成微生物)などの微生物が多いことが分かった。この差異は、血中免疫細胞の免疫応答遺伝子(例えば、細胞の成熟とシグナル伝達経路に関係する遺伝子)の発現の差異と相関していた。また、Weinerたちは、MS患者の他の腸内微生物叢の変化が免疫抑制剤の使用と相関していることも明らかにした。さらには、これより小規模の患者コホートで、患者の呼気中メタン濃度が対照より高いことも明らかになった。この結果は、MS患者の方がメタノブレビバクターの数が多いことと一貫している。
こうした腸内微生物叢の変化が免疫遺伝子の発現の変化やMS自体に関係しているのか、それとも免疫遺伝子の発現の変化やMS自体の結果として腸内微生物叢が変化するのかという点を明らかにするには、これよりも大型の患者コホートとMSの進行過程で採取されたサンプルを使って研究をさらに進める必要がある。また、今回観察された微生物叢の変化や呼気中メタン濃度の変化がMSのバイオマーカーとして利用できるかどうかを明らかにする上でも今後の研究が有用と考えられる。
doi: 10.1038/ncomms12015
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