【放射線科学】福島原発事故後のプルトニウム放出を示す証拠
Scientific Reports
2012年3月9日
Radiation: Evidence for plutonium release after Fukushima disaster
福島第一原子力発電所の事故から1年が経とうとしているが、今週、Scientific Reportsに掲載される論文では、事故後にプルトニウムやその他の放射性元素が大気中に放出されたことを示す同位体の証拠が示されている。この研究結果は、福島第一原発の原子炉の破損状況の推定と除染戦略にとって重要な意味をもつ可能性がある。 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(マグニチュード9.0)で、福島第一原発の電気系統が深刻な被害を受け、この事故が引き金となって環境中に大量の放射性元素が放出された。これまでにセシウム同位体など高揮発性の核分裂生成物が広範囲にわたって分布していることが各種評価によって明らかになっているが、一部のプルトニウム同位体を含む不揮発性の放射性元素の放出状況は明確になっていなかった。プルトニウム同位体のなかでも特に半減期の短いプルトニウム241(241Pu)については、放射性物質で汚染された作物の摂取を通じた放射線内部被曝のリスクが大きい可能性がある。 今回、J Zhengたちは、福島県内の測定地点における表層土と落葉落枝に含まれるプルトニウム同位体の組成を評価し、福島第一原発の北西と南の地域(半径20〜30キロメートルの立入禁止区域を含む)の大気中と地上へのプルトニウムの放出を示す同位体の証拠を明らかにした。プルトニウム241は、より安定したプルトニウム239やプルトニウム240と比べて放射壊変が高く、このことは、プルトニウム241とその壊変によって生じるアメリシウム241からの放射線量の長期的評価が必要なことが示している、とZhengたちは結論づけている。
doi: 10.1038/srep00304
注目の論文
-
12月17日
遺伝学:古代アンデス人は失われたラクダ科動物の系統を狩猟し、飼育していたNature Communications
-
12月16日
気候変動:氷河の消失は21世紀半ばにピークに達すると予測されるNature Climate Change
-
12月12日
海洋生態学:シャチはイルカを追跡してサケを狩るScientific Reports
-
12月11日
考古学:意図的な火起こしの初期の証拠Nature
-
12月10日
考古学:ローマの建築技術に関する明確な証拠Nature Communications
-
12月9日
Nature's 10:2025年の科学に影響を与えた10人Nature
