気候変動:古代インダス文明の崩壊は深刻な干ばつと関連している
Communications Earth & Environment
2025年11月28日
Climate change: Major droughts linked to ancient Indus Valley Civilization’s collapse
85年以上に及ぶ大規模な干ばつが相次いだことが、インダス文明(Indus Valley Civilization)崩壊の主要因だった可能性が高いことを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルCommunications Earth & Environment に掲載される。この発見は、古代エジプトと同時代の文明であり、現在のインド・パキスタン国境付近に存在したこの巨大古代文明がなぜ衰退したかを解明する手がかりとなり、環境要因が古代社会に与えた影響を明らかにする。
インダス文明(IVC:Indus Valley Civilization)は、約5,000年から3,500年前にパキスタンとインド北西部におけるインダス川とその支流周辺に存在した、最も初期の都市文化の一つである。最盛期(約4,500年から3,900年前)には、高度な都市と洗練された水利管理システムが特徴だった。しかし、この最盛期後の長期的な衰退の理由はいまだ完全には解明されていない。
Vimal Mishraら(インド工科大学ガンディナガール校〔インド〕)は、5,000年から3,000年前のインダス文明地域における気候条件をシミュレーションした。その結果を、インドの2つの洞窟における鍾乳石・石筍の地球化学データや、北西インドの5つの湖の水位記録など、過去の気候条件を間接的に測定した複数のデータと組み合わせた。その結果、約0.5℃の気温上昇と、地域全体の年間平均降水量の10~20%減少が確認された。さらに、4,450年前から3,400年前にかけて、4つの長期干ばつが発生したことも判明した。各干ばつは85年以上続き、インダス文明地域の65~91%に影響を及ぼした。
著者らは、これらの干ばつがインダス文明における集落立地選択に影響を与えたと示唆している。5,000年から4,500年前の集落は、降雨量の多い地域に集中していたが、4,500年前以降は干ばつによる水資源の減少が始まったため、インダス川に近い地域へ移ったと報告している。著者らが特定した最後の113年間に及ぶ干ばつ(3,531年から3,418年前)は、インダス文明における大規模な都市衰退を示す考古学的証拠と一致する。さらに、著者らは、インダス文明が単一の気候事象によって突然崩壊したのではなく、長期にわたる干ばつが主要な要因となり、徐々に衰退していったと結論づけている。
- Article
- Open access
- Published: 27 November 2025
Solanki, H., Jain, V., Thirumalai, K. et al. River drought forcing of the Harappan metamorphosis. Commun Earth Environ 6, 926 (2025). https://doi.org/10.1038/s43247-025-02901-1
doi: 10.1038/s43247-025-02901-1
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