考古学:デジタル地図によりローマ帝国の道路網が10万キロメートル増える
Scientific Data
2025年11月7日
Archaeology: Digital map increases Roman Empire road network by 100,000 kilometres
ローマ帝国全土の道路網を紀元150年ごろの状態で再現した、「Itiner-e」と呼ばれる高解像度デジタルデータセットおよび地図を報告する論文が、オープンアクセスジャーナルScientific Data に掲載される。この発見により、帝国の道路網の既知の長さは10万キロメートル以上増加した。
紀元2世紀の最盛期、ローマ帝国は5,500万人以上の人口を抱え、現在のイギリスからエジプト、シリアにいたる広大な領域を支配していた。帝国全域を網羅する道路網は、その発展と維持を支えたが、その全容は未だ完全に地図化されておらず、既存のデジタル化データも低解像度である。
Tom Brughmans(オーフス大学〔デンマーク〕)、Pau de Soto、Adam Pažout(バルセロナ自治大学〔スペイン〕)らは、考古学的・歴史的記録、地形図、および衛星画像を用いてItiner-eを作成した。このデータセットには、299,171キロメートルの道路が含まれており、これまでの推定値188,555キロメートルから増加し、約400万平方キロメートルをカバーする。著者らは、道路網のカバー率増加の要因として、イベリア半島、ギリシャ、および北アフリカにおける道路網のカバー率増加と、地理的現実に合わせて従来提案されていた道路ルートを修正したことをあげている。これには、山岳地帯を横断する道路を直線ではなく曲がりくねった経路で再現することも含まれる。Itiner-eは、14,769の道路区間で構成され、103,478キロメートル(34.6%)が幹線道路、195,693キロメートル(65.4%)が副次道路に分類されている。著者らは、道路の正確な位置が確実に判明しているのはわずか2.7%であり、89.8%は不正確で、7.4%は仮説に基づいていると報告している。
著者らは、Itiner-eが帝国の道路網に関する最も詳細かつ包括的な公開されているデジタル化データであり、現行の道路システム知識における空白領域を浮き彫りにしていると指摘する。同時に、Itiner-eでは道路網の時間的変遷を表現できず、帝国全域におけるこの点のさらなる研究が必要だと述べている。さらに、Itiner-eを将来の研究に活用し、ローマ道路が帝国の交通網、行政、移住、および疾病伝播に与えた影響を解明することができるかもしれないと提案している。
Itiner-eのオープンデータセットおよび地図はこちらからご覧いただけます:https://itiner-e.org/
- Data Descriptor
- Open access
- Published: 06 November 2025
de Soto, P., Pažout, A., Brughmans, T. et al. Itiner-e: A high-resolution dataset of roads of the Roman Empire. Sci Data 12, 1731 (2025). https://doi.org/10.1038/s41597-025-06140-z
doi: 10.1038/s41597-025-06140-z
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