気候変動:耕作地におけるフラッシュ干ばつのリスクが世界的に高まるという予測
Communications Earth & Environment
2023年5月26日
Climate change: Global risk of flash drought projected to increase over cropland
土地の乾燥が異常に速く進み、深刻な水不足が起こる「フラッシュ干ばつ」という現象の2100年時点での発生リスクが、特に北米とヨーロッパにおいて高くなるという予測が、モデル化研究によって明らかになった。このことを報告する論文が、Communications Earth & Environmentに掲載される。気候モデルによる予測によれば、温室効果ガス排出量が最も多いシナリオで、北米とヨーロッパの耕作地におけるフラッシュ干ばつの年間リスクが、それぞれ2015年の32%から2100年に49%と53%に上昇するという。耕作地でのフラッシュ干ばつの発生リスクが高くなるという予測が示されたことで、食料システムがさらに圧迫される可能性が生じている。
フラッシュ干ばつは、降水がなく、水分の蒸発速度が高い場合に発生し、地表が急速に乾燥する。フラッシュ干ばつが進行するスピードは、通常の干ばつよりも速いため、緩和戦略の実施を促す警告が十分になされないことが多く、耕作地がリスクにさらされることがある。
今回、Jordan Christianらは、フラッシュ干ばつの発生傾向の変化を検討し、いろいろな全球気候モデルによるシミュレーションを基に、全世界のフラッシュ干ばつのリスクを評価した。Christianらは、過去のフラッシュ干ばつのシミュレーション(1850~2014年)を分析し、「共通社会経済経路」(SSP)シナリオ(SSP 126、SSP 245、SSP 585の3種類)の下で、2015~2100年のフラッシュ干ばつの発生を予測した。共通社会経済経路は、さまざまな気候政策の下で、世界がどのように変化するのかを模索しており、持続可能なシナリオから高排出シナリオまで網羅している。これら3種類のシナリオ全てで、21世紀末に向けて全世界のフラッシュ干ばつの発生が6.0~9.5%増加すると予測された。
また、Christianらは、2015~2100年の世界の耕作地におけるフラッシュ干ばつのリスクが、過去より高くなると予測している。高排出シナリオの下では、ヨーロッパの耕作地におけるフラッシュ干ばつの年間リスクは32%(2015年)から53%(2100年)に増加し、北米では32%(2015年)から49%(2100年)に増加した。また、アフリカ、アジア、南米でも、フラッシュ干ばつのリスクが大幅に増加した。高排出シナリオで予測されたリスクは、それほど極端でない他の2種類のシナリオの場合よりも高かった。
Christianらは、世界人口の増加に伴い、フラッシュ干ばつの変化と食料需要が、食料安全保障を圧迫する要因になる可能性があるという考えを示している。
doi: 10.1038/s43247-023-00826-1
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