持続可能性:肉の代わりに海産物の食事にすれば栄養が改善されて二酸化炭素排出量も減る
Communications Earth & Environment
2022年9月9日
Sustainability: Swapping meat for seafood could improve nutrition and reduce emissions
持続可能な海産物は、温室効果ガス排出量を削減しつつ、牛肉、豚肉、鶏肉よりも多くの栄養をもたらすことを報告する論文が、Communications Earth & Environment に掲載される。この知見は、海産物の食事を他の動物性タンパク質の代わりにとることを奨励する政策が将来の食料安全保障を改善し、気候変動への対処に役立つことを示唆している。
全世界の人間の食事は、人口増加に対応するため、気候フットプリントを削減しつつ、栄養価を高める必要がある。海産物は、タンパク質、脂肪酸、ビタミン、ミネラルの優れた供給源であることが知られており、以前の研究で、食事における肉を海産物に置き換えることで環境にもたらされる可能性のある恩恵が実証されている。しかし、将来の食事による気候フットプリントを削減するための戦略では、植物ベースの「グリーン」ダイエットを奨励することが一般的で、海産物ベースの「ブルー」ダイエットの可能性は見過ごされている。
今回、Peter Tyedmers、Elinor Hallströmたちは、2015年の時点で、さまざまな漁場と養殖場に由来する世界的に重要な天然海産物と養殖海産物の栄養素密度と気候への影響を分析した。その結果、天然のサケ、ニシン、サバ、カタクチイワシだけでなく、養殖のイガイやカキが、栄養価の高さの割に気候への影響が最も少ないことが分かった。分析対象の海産物品種の半数は、牛肉、豚肉、鶏肉よりも栄養素密度が高く、温室効果ガス排出量も少なかった。また、生産方法と収穫方法の違いによって、それぞれの種の気候への影響が大きく変動することも分かった。温室効果ガス排出量をさらに削減するためには、漁業において燃料効率の良い漁業技術を採用し、枯渇した資源を再構築すべきであり、その一方で、養殖業においては、餌の消費量の少ない魚介類を増産し、もっと気候に優しい魚飼料の供給源を見つけるべきだという考えをTyedmersたちは示している。
今回の研究は、生態系への影響可能性ではなく、温室効果ガス排出量に注目した研究だが、今回の知見は、海産物が、気候にとって有益であり、栄養価の高い食物の持続可能な供給源となる可能性を明確に示している。Tyedmersたちは、気候変動と貧弱な食生活への取り組みを支援する政策において持続可能な海産物の消費を奨励すべきだと提案している。
doi: 10.1038/s43247-022-00516-4
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