環境:木造建造物の建設によってCO2排出量を削減できるかもしれない
Nature Communications
2022年8月31日
Environment: Timber housing could reduce CO2 emissions
このほど実施されたモデル研究で、今後、世界の都市部で居住を始める人々の90%が、構造用集成材で建設された中層建造物を住居とすれば、2100年には106ギガトンのさらなるCO2排出量削減を図れるかもしれないことが示唆された。この研究結果について報告する論文が、Nature Communications に掲載される。
従来の建造物は、鉄鋼やセメントなどの材料を使用して建設されるのが一般的で、これらの材料の生産工程において著しい量のCO2が排出される。これらの材料の使用が続けば、全球平均気温の上昇を2℃未満に抑えるために必要な残余カーボンバジェット(炭素予算)の35~60%に相当するCO2排出量となるかもしれないのだ。都市化傾向が続いていることを考えれば、二酸化炭素排出量が少なく、持続可能性を高めた建築材料を検討することが重要だ。
今回、Abhijeet Mishraたちは、オープンソースの世界多地域土地システムモデルを用いて、構造用集成材の需要増加によって2100年までの土地利用と直接的CO2排出と間接的CO2排出に及ぶ全球的影響と地域的影響を評価した。その結果、今後、世界の都市部で居住を始める人々の90%が、市街地に構造用集成材で新たに建設される中層建造物(4~12階建て)に居住すると仮定した場合、2100年には106ギガトンのさらなるCO2排出量削減が実現するかもしれないことが判明した。Mishraたちの考えでは、「木の都市」への移行を支援するために植林地の面積を拡大させる必要があり、構造用集成材による建設の追加需要がなく、保護されていない自然林の伐採量が増加するシナリオと比較して、2100年には1億4000万ヘクタール以上拡大していることが必要だとされる。
Mishraたちは、構造用集成材を使って中層建造物を建設することが、土地関連の累積CO2排出量の削減に役立つ可能性があるという考えを示しているが、その一方で、生物多様性と森林を保護するためには、「木の都市」への移行を実現する際に強力なガバナンスと慎重な計画が必要になると考えられる点に注意を要すると述べている。
doi: 10.1038/s41467-022-32244-w
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