注目の論文

環境:米国における家庭用水の危機を評価する

Nature Communications

2021年6月23日

Environment: Household water crisis in the USA assessed

米国では約50万世帯で水道設備が完備されておらず、さらに多くの世帯が質の悪い飲料水の問題に直面していることを報告する論文が、今週、Nature Communications に掲載される。こうした困窮の影響は、米国全土で特定の社会集団に偏っている。

上下水道設備の問題は、米国内の政策機関の間で懸念が高まっている領域である。これまでの研究によって、米国における社会的不平等に関連した給水問題のパターンが明らかになっているが、こうした研究は、水の困窮の1つの側面だけに着目したものが多く、この問題の幅広さは明らかになっていない。

今回、J. Tom MuellerとStephen Gasteyerは、米国国勢調査局と環境保護庁のデータを検討し、線形確率モデルを推定する方法によって、水の不公正をモデル化した。その結果、2014~2018年に、米国の世帯の推定0.41%で水道設備が完備されていないことが明らかになった。これは、48万9836世帯に相当し、米国全土における分布は不均一であった。一方、米国の市町村等水道システムの2.44%は、飲料水安全法に慢性的に違反しており、排水処理許可業者の6.01%は、水質浄化法に準拠していなかった。これら2種類の劣悪水質指標を用いて、2020年8月18日の時点で、計1165の市町村等水道システムに飲料水安全法の重大な違反があり、水質浄化法の許可を受けた2万1035の業者が重大な不適合状態にあることが判明した。より大きな影響を受けていたのは、高齢者、低所得者、教育水準の低い人々、そして、先住民族コミュニティーや農村部の人々であった。また、低所得者や有色人種の人々は、きれいな水を利用できず、水道設備が不完全である可能性が高いことも分かった。

著書たちは、水の困窮のタイプごとに異なった政策的解決法が必要であり、州レベルでの水の困窮の差異は今後の研究で検討されるべきだと主張している。

doi: 10.1038/s41467-021-23898-z

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