気候変動:グリーンランドの3大氷河の氷の減少量が予測を上回るかもしれない
Nature Communications
2020年11月18日
Greenland’s largest glaciers may lose more ice than predicted
グリーンランドの3大氷河が、1880~2012年の約8.1ミリメートルの全球海水準上昇に寄与したことを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。この論文では、21世紀末までの全球気温の上昇に関する現在の最悪のシナリオ(RCP 8.5)の下では、これら3大氷河の氷の減少量が、これまでの予測を上回る可能性のあることが示唆されている。
グリーンランドのJakobshavn Isbræ氷河、カンゲルルススアーク氷河、ヘルハイム氷河には、海水準を約1.3メートル上昇させるのに十分な量の氷がある。これまでの研究では、この3大氷河の氷が1970年代以降減少していると推定されたが、19~20世紀に起こった変化については、解明が進んでいない。
今回、Shfaqat Abbas Khanたちの研究チームは、この3大氷河の過去の写真を使って、1880~2012年の氷の減少量を算出した。その結果、この期間中のJakobshavn Isbræ氷河の氷の減少量が年間約1518ギガトン、1900~2012年のカンゲルルススアーク氷河とヘルハイム氷河の氷の減少量がそれぞれ1381ギガトンと31ギガトンと推定された。Khanたちの計算によれば、これは8.1ミリメートルの海水準上昇に相当するという。
RCP 8.5シナリオに基づいたモデルからは、この3大氷河の氷質量の減少が2100年までに9.1~14.9ミリメートルの海水準上昇に寄与する可能性があることが示唆されている。しかし、RCP 8.5シナリオ下では、全球気温が今後2100年までにさらに摂氏3.7度上昇すると予想されており、これは1880年から今までの気温上昇の約4倍に相当する。このため、Khanたちは、3大氷河の氷の減少量が、RCP 8.5シナリオに基づいた現時点での予測を上回る可能性があると示唆している。
doi: 10.1038/s41467-020-19580-5
注目の論文
-
11月28日
古生物学:糞便の科学捜査が恐竜の台頭を記録するNature
-
11月21日
天文学:近くの恒星を周回する若いトランジット惑星が発見されるNature
-
11月21日
気候:20世紀の海水温を再考するNature
-
11月20日
生態学:リュウキュウアオイが太陽光を共有するNature Communications
-
11月19日
気候変動:パリ協定を達成するために、CO2の受動的吸収を計算から分離するNature
-
11月18日
惑星科学:嫦娥6号のサンプルが月の裏側の火山活動の年代を特定Nature