気候変動:ヨーロッパ全域で極度の干ばつの発生頻度が上昇すると予測される
Scientific Reports
2020年8月7日
Climate change: Frequency of extreme droughts across Europe predicted to rise
温室効果ガス排出量が計画どおり削減できなければ、21世紀末には、2018~2019年に中央ヨーロッパで発生したような記録破りの2年連続の干ばつの発生頻度が、今よりも上昇するという予測を示した論文が、Scientific Reports に掲載される。
今回、Vittal Hariらの研究チームは、1766~2019年の長期世界気候データを用いて、2018~2019年の中央ヨーロッパの干ばつの影響を調べた。その結果、2018年と2019年の夏は、降水量がいずれも平均値を下回り、観測記録上最も暑かった3度の夏のうちの2度に該当することが明らかになった。2018年と2019年の夏は、中央ヨーロッパ地域の50%以上が極度の干ばつに見舞われ、観測記録上、最大規模で、最も影響の大きい2年連続の干ばつとなった。2番目に影響の大きかった干ばつは、1949年から1950年まで続いたが、影響を受けた地域の面積は33%小さかった。
Hariらは、全球気候変動のコンピューターモデルを用いて、今後数十年間に2年連続の干ばつの発生頻度がどのように変化するか、そして、温室効果ガス排出量の影響を受けるのかを予測した。温室効果ガス排出量のが最も増加すると予測される気候シナリオをモデル化したところ、今世紀後半(2051~2100年)にはヨーロッパ全域で2年連続の干ばつの発生件数が7倍増加すると予測された。また、この予測では、中央ヨーロッパの全域で、干ばつの影響を受ける耕作に適した土地の面積がほぼ倍増し、そこには4000万ヘクタール以上の耕作地も含まれることが示唆された。
また、中程度の温室効果ガス濃度の気候予測を用いた場合には、2年連続の干ばつの発生件数がほぼ半減し、低い温室効果ガス濃度の気候予測を用いると、発生頻度が90%以上低下すると予測された。干ばつの起こりやすい地域の面積は、中排出シナリオによる気候モデルでは37%減少し、低排出シナリオによるモデルでは60%減少すると予測された。
以上の知見は、今後の炭素排出量を削減するための対策の導入によって、ヨーロッパ全域で2年連続の干ばつ事象が発生するリスクを減らせる可能性のあることを示している。
doi: 10.1038/s41598-020-68872-9
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