注目の論文

【気候科学】最近の温暖化現象は過去2000年間に類を見ないほど深刻

Nature

2019年7月25日

Climate science: Recent warming events unmatched in the past 2,000 years

20世紀末の全球的な気温変化の速度と地域的広がりは、紀元後の時代(過去2000年間)における他の気候の変動よりもはるかに大きいことが明らかになった。この研究知見が、NatureとNature Geoscienceに掲載される2編の論文で報告される。これらの論文には、過去2000年間の気温の変化傾向を調べた結果が示されている。

過去2000年間の気候変動性については議論が繰り広げられてきた。特に注目すべき時期としては、中世の気候異常、小氷期、そして気候に対する人間の影響に対応した過去150年間の急速な温暖化などがある。これらの時期の範囲を決定することは、過去に気候変動性を引き起こした要因を明確に理解することとともに困難な作業となっていた。

今回、Raphael Neukomたちの研究グループは、約700件の気温変化の代理指標記録をまとめたデータを用いて、紀元後の時代における気候変動性の全球パターンを評価した。Natureに掲載されるNeukomたちの論文では、20世紀以前に気候時代が地球上で同時に起こったことはなかったことが報告されており、従来の考えと異なる研究報告になっている。例えば、紀元後の時代で最も気温が低かったのは、中部太平洋地域と東部太平洋地域では15世紀、ヨーロッパ北西部と北米南東部では17世紀、その他の地域では19世紀だった。また、産業革命以前は、全球的に一貫した長期温暖化現象が起こっていない。これに対して、紀元後の時代における最も温暖な時期は、地球上の98%以上の地域において2000年間の最後の数十年間だった。

Nature Geoscienceに掲載される論文では、Neukomたちは、地表気温の上昇率と駆動要因の数十年間の平均値を調べている。その分析結果によれば、少なくとも20年間の温暖化速度は、20世紀後半が最も高かった。産業革命以前の気温の変動は、火山活動が主たる原因だった。Neukomたちは、再構築とシミュレーションの結果が一致したことは、今後数十年間の気候予測が現実的である可能性を示唆しているという考えを示している。

こうしたテーマに関連して、Nature Geoscienceに掲載されるStefan Bronnimannたちの研究グループの論文では、19世紀前半の気候において火山噴火が果たした役割に関するさらに詳細な研究結果が示されている。この論文では、一連の噴火があった後に寒冷化と気候変動(アフリカの干ばつや弱いモンスーンなど)が起こったことが報告されている。この寒冷化からの回復は、産業革命の初期の影響が現われた時期と重なったために、それぞれの要因の相対的な影響を判定することの困難さが増した。

これらの研究結果を総合することは、産業革命前と20世紀の間に気候変動性がどのように変化したかを詳細に解明するために役立つ。

doi: 10.1038/s41586-019-1401-2

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