【天体物理学】木星の雷によって生じる電磁波の高周波成分が測定された
Nature
2018年6月7日
Astrophysics: Lightning on Jupiter now whistling a different tune
木星探査機ジュノーの観測結果から、木星での雷の分布と発生率に関する新たな知見が得られたことを報告する論文が今週、NatureとNature Astronomyに掲載される。
1979年に惑星探査機ボイジャー1号が木星の周囲で超低周波の電波放射を検出し、音程が下がっていく口笛の音に似ていたことから、ホイッスラーと呼ばれた。ホイッスラーは、巨大ガス惑星である木星の大気中で発生する雷によって生じると考えられている。木星の雷は、これまでに木星に接近した探査機の大半によって観測されており、メガヘルツ域の信号の検出が試みられているが、これまでの成果は、夜側の光学画像と低周波(キロヘルツ域)の電波の検出だけだ。
Natureに掲載されるShannon Brownたちの論文では、木星における600メガヘルツという高周波の雷空電(雷によって生じる広帯域の電磁波の総称)の観測結果が示されている。この結果から、木星の雷放電は、地球の雷放電(周波数がギガヘルツ域に達することもある)とこれまで考えられていたほど差がないことが示唆されている。Brownたちは、木星の雷が両極付近と北半球で発生することが多く、赤道では発生しないことを明らかにし、極地方向の湿潤対流が活発に起こっているという考えを示している。こうした新知見は、木星の組成、大気循環、およびエネルギーの流れをさらに解明する上で役立つ可能性がある。
Nature Astronomyに掲載されるIvana Kolmasovaたちの論文では、これまでに木星の雷によって生じたホイッスラーの最大のデータベースが示されている。このデータベースには1600以上の信号が登録されており、これはボイジャー1号によって記録された信号の約10倍である。このデータベースによれば、雷の発生頻度は最も多い時で1秒間に4回で、地球の雷雨における発生率に近く、ボイジャー1号によって検出された最大発生率の6倍だった。
doi: 10.1038/s41586-018-0156-5
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