注目の論文

【気候科学】米国の二酸化炭素排出量が減った主因は景気後退だった

Nature Communications

2015年7月22日

Climate science: Economic recession drove reductions in US CO2 emissions

2007~2013年に米国の二酸化炭素排出量が減少したが、その主な要因は景気後退であり、天然ガスのような二酸化炭素発生量の少ないエネルギー源への転換が果たした役割は比較的小さかったという報告が、今週掲載される。

2007年~2013年に米国の化石燃料二酸化炭素排出量は約11%減少し、その原因は水圧破砕技術の革新による2007年以降の天然ガス供給量の急増だと考えられていた。しかし、二酸化炭素排出量の減少に寄与した要因の定量化が行われていないため「天然ガスの急増」がどのような役割を果たしたのかについては推測の域を出ていない。

今回、Klaus Hubacekたちは、米国の二酸化炭素排出量がほぼ増加していた時期(1997~2007年)とほぼ減少していた時期(2007~2013年)における排出量変化の原因について報告している。つまり、2007年までの排出量増加をもたらした要因は経済成長と人口増加だったのに対して、2007~2009年の排出量減少では、その83%が商品とサービスの消費の減少を原因とし、わずか17%が使用燃料構成の変化を原因としていた。また、2009~2013年の景気回復期には、二酸化炭素排出量の増加を抑える上で、ガソリン価格の高騰、2012年の暖冬、製造業のエネルギー効率の改善などの要因の方が重要度が高かった。

Hubacekたちは、米国の経済が回復し成長した場合の二酸化炭素排出量削減に対して、さらなる天然ガス使用量の増加は限定的な効果しかもたらさない可能性があり、二酸化炭素排出量削減を達成できるか否かは、むしろ米国環境保護庁の“Clean Power Plan”のような政策にかかっているのではないかと考えている。

doi: 10.1038/ncomms8714

「注目の論文」一覧へ戻る

プライバシーマーク制度