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ヌタウナギが教えてくれる 脊椎動物の進化
海に棲み、名前は「ウナギ」だがウナギではなく、ましてや厳密には魚類でもない。ヌタウナギには背骨がなく、顎もなく、鼻孔が1つしかない原始的な脊椎動物。進化形態学者、倉谷滋博士は、この動物に、ヒトにまでつながる進化と発生の謎を探っている。
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低酸素環境で、造血幹細胞が 維持される仕組みを解明!
再生医療などへの期待が高まる幹細胞だが、まだ謎も多く残されている。めったに増殖せず、長い間維持され続ける仕組みも、その1つだ。慶應義塾大学医学部の田久保圭誉専任講師らは、造血幹細胞の維持には低酸素環境が重要であることを発見し、その分子メカニズムを突き止めた。幹細胞の維持基盤の全容解明や人工培養に向かって、道が開かれた。
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少数分子の反応が生物を支配する!?
例えば、遺伝子の物質的本体であるDNAは、1個の細胞中にたった2分子ずつしか存在しない。こんな少数個の分子の挙動を論じるのに、統計学的手法は使えない。もしも生命の本質に迫りたいなら、新たな原理を探らねばならないのだ。そう信じる永井健治・大阪大学産業科学研究所教授は、従来の生化学の常識をくつがえす「少数性生物学」の概念を世界に向けて発信する。
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軸索にできる「小さな突起」に、シナプスの形成と成熟のカギ!
脳にある膨大な数のニューロンは、シナプスでつながれることで回路を構築し、記憶、学習、運動などの機能を果たす。しかしこれまで、シナプスができるようす自体をリアルタイムで詳細にとらえた研究はなく、その分子メカニズムにも、多くの謎が残されていた。このたび、東京大学大学院医学系研究科の岡部繁男教授らは、イメージングの手法により、シナプスの形成過程を鮮明にとらえることに成功した。
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細胞生物学の最後の謎、中心体に迫る
動物細胞の細胞小器官である中心体。細胞分裂時に染色体を引っ張る「手」を形作る役割は知られていたが、それ以外はあまり注目されてこなかった。だが最近、繊毛との関係がクローズアップされたり、細胞分裂や分化の「司令塔」としての働きが示唆され、脚光を浴びている。34歳の若き細胞生物学者、北川大樹氏は、中心体の分子構造を明らかにし、中心体研究に大きな突破口を開いた一人である。
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RNA転写を網羅的に解析するCAGE法が、エンコード計画で貢献!
ヒトゲノム計画の完了後に始まった「エンコード」計画。ヒトゲノムのデータ上に、遺伝子や機能の発現に必要なあらゆる領域をマッピングしようという試みだ。2012年9月上旬、そのフェーズ2の一連の成果論文が、Natureなど各誌に公表された。今回の解析のカギとなったのは、理化学研究所オミックス基盤研究領域が開発したCAGE法という手法。CAGE法の産みの親であるピエロ・カルニンチ チームリーダーに話をうかがった。
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霊長類の脳で、“下等な”動物の神経回路が果たしていた役割とは?
高度に発達したヒトやサルの脳神経系にも、ネコなどの“下等”な動物が持つ神経回路が残存している。神経生理学者の伊佐正・生理学研究所教授は、そうした“古い脳”にも重要な機能があることを新しい手法を用いて実証し、神経科学に新たな局面を切り開いた。
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分化能を失った神経系前駆細胞が、再びニューロンを作り出した!
脳内でネットワークを構築し、高度な機能を発揮するニューロン。その大半は、胎生期の神経幹細胞(神経系前駆細胞)が増殖と分化を繰り返すことで作られる。そして、生後は、ごく限られた部位を除いてニューロンへの分化能が失われる。しかし東京大学分子細胞生物学研究所の後藤由季子教授らは、ある遺伝子をマウス大脳の神経系前駆細胞に導入することで、誕生後に再びニューロンへと分化させることに成功した。
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一斉に波打つ繊毛 — その協調運動のカギは根元にあった
気管、卵管の表面は、上皮細胞で覆われ、一面に繊毛が生えている。たくさんの繊毛は協調して同一の動き方をし、バケツリレー式にものを運ぶ。異物の除去や、卵子の運搬移動がそうだ。世界的な上皮細胞研究者、月田早智子・大阪大学教授は、そうした繊毛の協調運動の解明に取り組んでいる。
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生体分子を「見たい!」
筋肉の収縮は、アクチンとミオシンの相互作用で生じる分子レベルの力が積み重なって起こる。このミクロの動きを実際に見たい。難波啓一教授は学生の頃、そう思った。だが、アクチン繊維の太さはわずか10nm。これを見るなんて、ほとんど不可能に近かった。それから30数年、ついにアクチン繊維を「見る」ことに成功。そして、今年、日本学士院賞と恩賜賞を受賞。難波教授にお話をうかがった。
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転写因子ネットワークを再構築することで、別の機能を果たす細胞に転換!
切断すると2個体になるプラナリアやちぎれた足が生えるイモリなど、下等動物には、体のあちこちが再生するものがいる。哺乳類でも、線維芽細胞を特殊な薬剤で処理すると脂肪細胞様になることなどが知られるが、高等動物細胞の分化や脱分化のメカニズムには不明な点が多かった。理化学研究所オミックス基盤研究領域の鈴木治和プロジェクトディレクターは、細胞が特定の機能を発揮するために必要な転写因子とそのネットワークを体系的に抽出する技術を開発。細胞に「別の細胞の機能を果たすための転写ネットワーク」を移植することで、iPS細胞などの幹細胞を経ずに、機能を転換させることに成功した。
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ピンボケ度で距離を知るハエトリグモの目
ハエトリグモは、クモの巣を張らない。獲物めがけてジャンプし、捕まえるのだ。その目の構造が変わっていることを知った小柳光正・大阪市立大学准教授たちは詳しく調べてみた。すると、これまでに知られていない珍しい視覚の持ち主であることが発見された1。網膜に結ぶ像のボケ具合で、ハエトリグモは獲物までの距離を測っていたのである。
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シナプスの活動を一括して調べることで、神経回路の緻密な配線メカニズムに迫る!
言語、記憶、感情などの高次機能を発揮する脳の回路。その回路を構成する膨大な神経細胞は、混線やロスなく確実に情報をやりとりするとみられている。高精度な配線と回路編成は、いったいどのようにして行われるのか。東京大学大学院薬学研究科の池谷裕二准教授は、シナプス活動を一斉に観察できる手法を開発し、その解析により、緻密な回路編成の仕組みの一端を明らかにした。
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セントロメアの研究からヒストンと似た新規のタンパク質が見つかった
長い染色体DNA分子の中ほどに「セントロメア」と呼ばれる場所があり、細胞分裂で重要な働きをしている。国立遺伝学研究所の深川竜郎教授は、DNA上でセントロメアがどのように機能するのか研究している。今回、ヒストンに似たタンパク質が、その機能構築の決定にかかわっていることを発見した。遺伝現象におけるヒストンコードの役割が近年注目されているが、ヒストン以外のタンパク質がかかわる新規のコードが存在しているのかもしれない。
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糖鎖に応答する新たなエピゲノム制御を発見
ヒトの遺伝子は2万個ほどしかないが、それらを効率よく使うシステムとしてさまざまな仕組みが知られている。最近このようなシステムの1つとして、後天的にDNAや染色体の開き具合を調節するエピゲノムが注目されるようになってきた。このエピゲノム制御のカギを握るのは、DNAやヒストンの一部に施される化学修飾だ。東京大学分子細胞生物学研究所の加藤茂明教授は、ある酵素に「小さな糖」が付加されることで、化学修飾のスイッチが制御されていることを突き止めた。
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自律性を備えた人工細胞を創出し、生命と物質の境界を探る
「生命とは何か」という問いに物理学で答えていこうと挑戦しているのが瀧ノ上正浩・東京工業大学講師だ。生命の本質を微小空間で再現し、その挙動を数式で表す。いま挑戦しているのは、細胞の自律性を人工的に作り出すことだ。
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多点の弱い相互作用を利用して、細胞のふるまいを制御する
半導体デバイス、マイクロマシン、ナノテクなど微細な世界の操作を得意とする日本。これらのノウハウを医療の場でも応用すべく、その基盤作りとして「ナノメディシン分子科学」のプロジェクトが始まった。高分子材料科学が専門の京都大学再生医科学研究所の岩田博夫所長は、これまで人工膵臓の研究開発を続けてきており、今回のプロジェクトにおいて「多点の弱い相互作用を利用した分子、細胞の制御」の研究代表を務める。いったいどんなアイデアで細胞を制御しようとしているのだろうか。
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遺伝子からのニパウイルス合成に世界で初めて成功(甲斐 知恵子)
東京大学医科学研究所の甲斐知恵子教授らはリバースジェネティクスの技術を確立し、ニパウイルスの人工合成に世界で初めて成功した。ニパウイルスは、1994 年マレーシアに突如として現れた。以来、アジア各地で小さな流行を繰り返し、致死率が高い。今回のウイルス合成によって、病原性を発揮するメカニズムの解明やワクチン開発が進むと期待されている。
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128億8000万光年、最も遠い銀河の世界記録を更新(家 正則)
すばる望遠鏡 を用いて、国立天文台の家正則教授率いる観測チームがこれまでで最も遠い銀河の観測に成功した。「IOK-1」と名づけられた銀河の地球からの距離は128億8000万光年で、それまでの記録を6000万光年更新。宇宙進化の解明を前進させるこの成果はNature2006年9月14日号で発表され、広く世界中に報道された。家教授に、発見の経緯やその意義、今後の展望などについて話を聞いた。