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分化能を失った神経系前駆細胞が、再びニューロンを作り出した!

後藤 由季子

Nature ダイジェスト Vol. 9 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2012.121019

脳内でネットワークを構築し、高度な機能を発揮するニューロン。その大半は、胎生期の神経幹細胞(神経系前駆細胞)が増殖と分化を繰り返すことで作られる。そして、生後は、ごく限られた部位を除いてニューロンへの分化能が失われる。しかし東京大学分子細胞生物学研究所の後藤由季子教授らは、ある遺伝子をマウス大脳の神経系前駆細胞に導入することで、誕生後に再びニューロンへと分化させることに成功した。

–– Natureダイジェスト:はじめから神経幹細胞の研究をされていたのでしょうか?

後藤:いいえ、元は東京大学理学部や京都大学のウイルス研究所において、MAPキナーゼ経路の同定や、この経路による細胞増殖制御の研究をしていました。細胞は、外からの情報に従ってMAPキナーゼ経路を活性化させ、核内にシグナルを伝えます。私は、研究の過程で、このシグナルが細胞の増殖だけでなく、分化にも関わっていることを見いだしました。同じシグナル伝達経路を利用しながら、細胞が状況に応じて巧妙に応答を変えることに、驚きと感動を覚えました。

この成果から、「細胞の運命を制御するシグナル伝達」、そして「生体をかたちづくる幹細胞の運命制御」へと興味が広がっていきました。さらに、生体の中で最も複雑かつ精緻で高度な機能を担う脳が、構造体としてどのように作られるのか、その根本の原理を探りたいと思うようになりました。まず、留学先のフレッド・ハッチンソンがん研究所とハーバード大学において、MAPキナーゼの研究を続けながら脳研究の基本を学びました。1999年に帰国し、東京大学分子細胞生物学研究所で独立する際に、本格的に脳神経系の発生研究を始めました。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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