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オープンアクセスの早期実現のためにブックマーク

Nature 495, 442-443 (号) | doi:10.1038/495442a

インターネット上の学術文献に誰もが無料でアクセスできるようにするオープンアクセス運動を支持する3人が、論文の「発見されやすさ」から自国語への翻訳まで、この運動を次の段階に進めるための処方を提案する。

方針の足並みをそろえる時期が来た

ALMA SWAN
SPARC(国際学術情報流通基盤整備事業)Europe、欧州広報部長

近年、オープンアクセス出版に関する方針の策定が各機関で急激に進み、差し迫った問題を生じるに至っている。研究文献のオープンアクセス化を5年以内に完全に実現しようとするなら、機関ごとにばらつきのある方針の足並みをそろえる必要がある。複数の研究助成機関から助成を受けている研究者にとって、これは極めて重要なことだ。彼らの研究成果へのオープンアクセスを手頃な費用で継続的に実現するには、各機関の方針をそろえることが、唯一かつ単純な方法であるからだ。

オープンアクセスに関する良い方針を策定するには、研究助成機関、大学、国、州が力を合わせる必要がある。良い方針とは、どのようなものだろう? それは、明瞭で、的確で、確固たる目的を持つもので、また、研究者間のコミュニケーションの新しいモデルを支援し、著作権が障害にならないようにし、著者による学術誌の選択に干渉せず、即時アクセスを義務化し、破綻した市場をそのままにせず、費用を抑制する方法を見いだすものだ。

Credit: JIM SPENCER

良い方針は、オープンアクセス誌を通じた「ゴールドオープンアクセス(ゴールドOA)」を定義する際に、「著者の費用負担による」や「有料で」といった言葉を使わない。なぜなら、66%のオープンアクセス誌が著者に課金していないからだ。代わりに用いるのは、「コンテンツをインターネット上で即時に無料で利用できるようにする学術誌」という言葉である。一方、リポジトリを通じた「グリーンオープンアクセス(グリーンOA)」を定義する際には、「エンバーゴ(公開猶予)」という言葉を使わない。なぜなら、リポジトリの60%が公開猶予期間を設けていないからだ。代わりに用いるのは、「著者自身により、一般的にはリポジトリへの登録によって、直接オープンアクセス化された文献」という言葉である。ここで、グリーンOAが出版社に害をなすという前提はない。実際に、害を及ぼしていないことを裏付ける証拠があるからだ。

「ゴールドの道」と「グリーンの道」のどちらをとるにしても、論文が最大限に再利用されるような許諾を与えることは可能であり、良いオープンアクセス方針では、実際にそのようになっている(Nature 2013年3月28日号、440ページ参照)。良い方針は、人々にそれを遵守させるための手段(と、遵守しない者に対する制裁)を導入し、オープンアクセスが破壊的な変化を引き起こすという事実を受け入れ、研究にとっての利益と、何よりも、研究助成金の出所である税金を支払っている国民の利益を重視するものなのだ。

具体的には、許容可能な公開猶予期間や、リポジトリに登録された論文をオープンアクセス化するタイミング、オープンアクセス誌で論文を発表するための費用を研究助成金から支出できるかどうかなどについては、研究助成機関と大学が協力して方針をそろえなければならない。また、研究助成機関と大学は、「ハイブリッド学術誌(掲載された論文を著者の費用負担でオープンアクセス化できる購読型学術誌)」に対する支払いを許可するかどうかを検討し、権利や利用許諾の要請、リポジトリの選択に関して、研究助成機関がどのような立場にあるかについても考える必要がある。

Alma Swan
Alma Swan

Credit: JIM SPENCER

欧州委員会(EC)は、これらの詳細について明確な立場を表明していて、2014年1月からは、論文の出版または受理と同時に機関リポジトリに登録するよう要請することになっている。公開猶予期間は、科学、技術、工学、医学分野の論文では6か月、人文科学と社会科学の論文でも12か月しか認めない。ECの方針では、著者が著作権を保持して、自分の研究成果を発表する際に出版社に許諾を与えるという形式を奨励し、論文を発表するための費用を研究助成金から支出することを許可する。ECは、欧州諸国がECのオープンアクセス方針に合わせた方針を策定することを期待している。

米国の州レベルで提案されるオープンアクセス方針では、公開猶予期間を連邦レベルの方針に合わせて最長12か月としている。ベルギーとアイルランドでは、研究助成機関と大学がリポジトリへの論文の登録に関する方針をそろえていて、研究評価のためにはリポジトリへの登録が必要であるとし、ECと同じ公開猶予期間を定めている。スペイン、ノルウェー、デンマークでは、すでにECのオープンアクセス方針に合わせた方針が策定されている。オーストラリアの2つの研究助成機関の方針はよく似ていて、リポジトリへの登録を必要とし、許容される公開猶予期間もわずかしか違わない。

米国の州レベルで提案されるオープンアクセス方針では、公開猶予期間を連邦レベルの方針に合わせて最長12か月としている。ベルギーとアイルランドでは、研究助成機関と大学がリポジトリへの論文の登録に関する方針をそろえていて、研究評価のためにはリポジトリへの登録が必要であるとし、ECと同じ公開猶予期間を定めている。スペイン、ノルウェー、デンマークでは、すでにECのオープンアクセス方針に合わせた方針が策定されている。オーストラリアの2つの研究助成機関の方針はよく似ていて、リポジトリへの登録を必要とし、許容される公開猶予期間もわずかしか違わない。

速やかで公平なインデックス採録を

MATTHEW COCKRILL
BioMed Central 代表

新しいウェブサイトを作成しても、それに価値があることを数年間にわたって証明しないと Google の検索対象にならないような世界を想像してみてほしい。現在の科学出版は、本質的にはそのようなモデルになっている。ある学術誌が PubMed Central や Web of Science や Scopus のインデックスに採録され、その掲載論文が科学者の目に留まりやすい状態になるためには、その学術誌が質の高い出版物であることを実績により証明しなければならないのだ。ここで、ジレンマが生じる。学術誌が質の高さを証明するための実績を積み上げている期間、学術誌は掲載論文の著者が最も重視しているもの、すなわち「発見されやすさ」を著者に提供することができないのである。

オープンアクセス運動がさらなる飛躍を遂げるためには、新しい学術誌をインデックスに採録することと、その掲載論文を発見されやすい状態にすることとを分けて考える必要がある。PubMed Central が設立された当初は、オープンアクセス誌を速やかに採録する方針をとっていて、このモデルの正しさを証明する上で非常に役に立った。2009年に彼らがこの方針を放棄したことで、既存の学術誌の地位が保護され、新しい学術誌は不利な立場に置かれ、科学出版の進歩は阻害されるおそれがある。

現在、新しい学術誌が PubMed Central のインデックスに採録されるためには、普通は15本以上の論文を掲載している必要がある。しかし、eLife というオープンアクセス誌は、15本どころか1本も論文を掲載していなかった創刊時に、順番待ちの列を飛び越えて PubMed Central に採録された。このことは、判定基準があいまいであると物議を醸した。確かに、eLife のような質の高い学術誌がすぐに採録されないことは、科学コミュニティーにとって損害である。しかし、その早さは、ジョージ・オーウェルの有名な言葉をもじって『すべての学術誌は平等だが、ある学術誌は、ほかの学術誌よりもっと平等である』という皮肉が出そうな、不当な印象を与えた。

Matthew Cockerill
Matthew Cockerill

Credit: JIM SPENCER

対照的に、我々が BioMed Central で出版している主要な学術誌Genome Medicine は、創刊から4年を経てようやくトムソン・ロイター社の Web of Science のインデックスに採録された。Genome Medicine の編集陣は強力で、論文出版ペースは年間90本前後で安定しており、また、インパクトファクターは6程度と予想されている。この値は Web of Science に採録されている学術誌の95%をしのぐ。それにもかかわらず、Web of Science のインデックスに採録されるまでに4年もかかったのだ。

著者が支払う論文掲載料を目当てに質の低い学術誌を発行する「ハゲタカ出版社」の存在は、明らかに問題である(Nature 2013年3月28日号、433ページ参照)。しかし、我々が求める答えは、要塞の壁を際限なく高くすることでも、高い地位にある友人を持つ学術誌だけが登れるような壁を作ることでもない。このような壁は、科学の発展を阻害するからだ。

必要なのは、インデックスへの採録の手順を変えることだ。新しい学術誌は、一定の基準を満たしていれば必ずインデックスに採録されるようにするべきだ。このとき、「暫定」というタグは付けてもよいが、掲載論文は、発見されやすく、引用可能な状態にしなければならない。その後、学術誌の編集基準の低さや引用回数の極端な低さが明らかになった場合には、インデックスから容易に削除できるようにし、それ以前のコンテンツは削除するか警告を付けるかすればよいだろう。

※ M.C. は、金銭的利益相反に関する申告をしている:詳細はgo.nature.com/ns5f9qを参照されたい。

非英語圏でのオープンアクセス

DOUGLAS SIPP
理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター(神戸)

オープンアクセス出版が一般的になれば、英語圏の市民は、労せずして有利な立場に置かれることになる。彼らは、非英語圏の国々から助成を受けて行われた研究についても、英語で書かれた論文を読んだり利用したりすることができるからだ。これに対して、非英語圏の市民は、自分たちが支払った税金を出所とする助成を受けた研究の論文を読めない可能性がある。そうした国々の政府と公的助成機関は、近い将来、この不公平な状況を解消することを迫られるだろう。

Douglas Sipp
Douglas Sipp

Credit: JIM SPENCER

東アジアの科学をリードする中国、日本、韓国は、論文発表数においてそれぞれ世界第2位、4位、12位を占めていて、多くの研究機関や研究助成機関が、出版された研究論文を登録するオープンリポジトリを設立している。例えば、中国科学院国家科学図書館は、2009年に、中国科学院に所属する科学者の論文を、発表から1か月以内にオープンリポジトリに登録することを義務付けた。現時点では、このリポジトリに登録されている論文は、主に中国語の学術誌で発表されたものであるようだ。日本の基礎科学研究の最大の助成機関である文部科学省は、2012年になってようやく、文部科学省から助成を受けている研究者に自分の論文のアクセス状態を報告させることを提案したが、アクセスについて具体的な要請は行っていない。

日本と韓国は、科学者と一般市民との対話を促し、科学に対する市民の理解を深めるために、市民が科学情報にアクセスしやすい環境の整備に務め、科学博物館、メディア、サイエンスコミュニケーションやアウトリーチ活動のためのオンラインプログラムやトレーニングに多額の資金を提供してきた。例えば日本では、2001年に日本科学未来館という大規模な科学博物館がオープンしているし、北海道大学と早稲田大学にはサイエンスコミュニケーションと科学ジャーナリズムのためのプログラムがある。韓国では、国立中央科学博物館への助成金を増やし、韓国科学技術院(城南市)ではメディアトレーニングを行っている。

しかし、こうした活動では、研究のデータや手法、分析結果のすべてに直接触れることはできない。非英語圏のサイエンスコミュニケーションの問題を解決する方法の1つとして、自国語の学術誌を活用することが考えられるが、これらは質にばらつきがあり、インパクトファクターも小さい。いまだに英語が科学の共通語であることは明らかだ。

「問題を解決するためには多くの費用と時間がかかる。」

非英語圏の国々で真のオープンアクセスを実現する最も明快な方法は、オープンアクセス運動そのものを参考にすることかもしれない。例えば、言語の壁を低くするグリーンOA的アプローチでは、研究助成機関が科学者または研究機関に対して、公的助成金による研究論文を発表するときに、それを自国語に翻訳してオープンリポジトリに登録することを義務付けるのだ。一方、ゴールドOA的アプローチでは、学術誌出版社や第三者に翻訳を委託するために助成金を支給することが考えられる。いずれにせよ、問題を解決するためには多くの費用と時間がかかる。人類にとって最も貴重な資源の1つである「知識」に一般市民がアクセスできるようにするために、非英語圏の国々は、英語圏の国々以上に努力しなければならないのだ。

(翻訳:三枝小夜子)

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