Nature ハイライト

細胞生物学:葉緑体の内外包膜を結ぶ架け橋

Nature 564, 7734

葉緑体はミトコンドリアと共通点が多い。どちらも二重の膜に囲まれた細胞小器官で、エネルギー変換に関わっている。また、両方共に内部共生していた自由生活細菌の名残と考えられていて、独自のゲノムを持ってはいるが、進化の過程で遺伝子の大半を宿主細胞の核ゲノムへと移してしまっている。このことは、これらの細胞小器官のタンパク質の大半が細胞質で合成され、葉緑体膜もしくはミトコンドリア膜を通過して小器官内部へと運ばれることを意味している。葉緑体では、2つのトランスロコン装置、すなわち外包膜のTOCと内包膜のTICが、このタンパク質搬入機能を担っている。今回H Liたちは、TOCとTICの間で行われる葉緑体包膜を越えてのクロストークに注目し、TICの新規成分TIC236を明らかにした。TIC236は内包膜にある内在性タンパク質だが、その大きなドメイン1個が膜間腔に突き出していて、外包膜にあるチャネルタンパク質TOC75に直接結合している。さらに、TIC236のレベルがTOC–TIC超複合体の組み立てに影響し、従って葉緑体内部へのタンパク質搬入にも影響を及ぼすことが分かった。

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