Nature ハイライト

Cover Story:動きを捉えた画像:カルシウムポンプが揺れ動くさなかの脂質二重層を結晶学的手法で捉える

Nature 545, 7653

表紙は、X線溶媒コントラスト変調法によって明らかになった、カルシウムポンプの結晶が埋まっている脂質二重膜である。通常のX線結晶学では膜リン脂質を可視化できないので、膜タンパク質の構造解析では、脂質二重層が存在しないようにせざるを得ないことが多い。今回、豊島近(東京大学)たちは、リン脂質頭部基を含めることができる溶媒コントラスト変調法を用いた結晶学的方法を示し、将来の結晶撮像では脂質がない状態にしなくてもよいことを示唆している。彼らは、この手法をカルシウムポンプの4つの段階に適用し、ポンプの連続的なコンホメーションの切り替えにどのように脂質二重層が能動的に関与しているかを初めて明らかにしている。そして、膜の「浮き」として機能し、輸送中に膜二重層に対してポンプの軸が傾斜できるようにするトリプトファン残基の帯と、膜の「いかり」として機能し、ヘリックスの運動にてこの作用をもたらすアルギニン残基とリシン残基を特定できた。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度