Nature ハイライト

免疫:マウスが揺るがす黒死病変異拡大説

Nature 427, 6975

HIV感染を防ぐ変異がどのような経緯で欧州に広まったのか、広く受け入れられている仮説を揺るがす研究成果が発表された。この変異は、ペストに対する防御として生じたと考えられてきたが、この変異の効果をマウスで調べたところ、そうではないらしいことがわかったのである。 HIVはCCR5というタンパク質を表面にもつ細胞にしか感染できない。そのため、このタンパク質の機能が損なわれるCCR5D32という変異をもつ細胞は、HIV感染に耐性を示す。CCR5D32は800年前に出現して欧州に広く見られることから、この変異が急激に広まったのは、これがペスト菌Yersinia pestisから体を守ってくれるからだった可能性があると専門家は推論してきた。1346〜52年の黒死病の大流行で、欧州ではおよそ2,500万人がペスト菌の犠牲になった。 しかしCCR5D32をもつマウスは、正常マウスとまったく同じようにペスト菌に感受性を示すと、D E Mosierたちが報告している。他で発表された最近の研究によれば、欧州にこの変異が広がった原因はペストよりもむしろ天然痘かもしれない、と著者たちは付け加えている。

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